ガザ支援物資配布で続く銃撃、800人超が犠牲に:「飢えか死か」の悲痛な声

パレスチナ自治区ガザでは、支援物資の配布所周辺で住民がイスラエル軍に銃撃される事件が頻発しており、深刻な人道危機が深まっています。ガザ保健当局によると、米国とイスラエルが主導する物資配布が開始されてからわずか1か月半余りで、800人を超える人々が命を落としました。食料不足に直面しながらも、命の危険と隣り合わせで支援を求める住民からは、「飢えで死ぬか、配布所で死ぬかだ」という悲痛な叫びが上がっています。軍による意図的な発砲の疑惑も浮上し、国際社会からの非難の声が高まっています。

支援物資配布開始と相次ぐ犠牲

ガザにおける国連主体の物資配給が制限される中、米国とイスラエルが支援する「ガザ人道財団」(GHF)による物資配布が開始されたのは5月27日のことです。しかし、これ以後、ガザ中部や南部にある複数の配布所には食料を求める住民が殺到し、その多くが銃撃の犠牲となっています。

AP通信が報じたところによると、最南部のラファ近郊では7月12日、食料を求めて配布所へ向かっていた31人が射殺されるという痛ましい事件が発生しました。ガザ保健当局は7月13日、GHFによる配布開始以降の死者数が833人に達したと発表し、事態の深刻さを浮き彫りにしています。これらの事件は、人道支援を求める人々が直面する絶望的な状況を示しています。

ガザ南部ハンユニス、路上で支援物資を拾うムハンマドさん。飢餓に直面する住民の困難な状況を示す。ガザ南部ハンユニス、路上で支援物資を拾うムハンマドさん。飢餓に直面する住民の困難な状況を示す。

イスラエル軍の説明と住民の現実

イスラエル軍は、配布所周辺での発砲について「部隊に接近してくる不審な動きがあった」と説明し、「警告射撃だ」と主張しています。しかし、現場の住民の声は、その説明とはかけ離れた現実を伝えています。

ガザ南部ハンユニスで今月上旬、道路に膝をつき、襲撃されたトラックからこぼれ落ちた米や豆を必死に拾い集めていたアブイブラヒム・ムハンマドさん(36)は、読売新聞通信員に対し「私たちが直面しているのは飢えの苦しみと、食料を手に入れようとした際に訪れる命の危険だ」と打ち明けました。彼は危険を避けるため、正規の配布所に行くことを避けています。数キロ離れた避難先で待つ子供たちのために、砂や土を取り除いたわずかな食料を持ち帰るしかないと語り、「生きて家族を養うにはこの方法しかない」と、その悲痛な決意を表明しました。

意図的な発砲疑惑と国際社会の非難

配布所周辺での発砲を巡っては、イスラエル紙ハアレツが6月下旬、兵士らの話を基に「イスラエル軍が住民に向けて意図的に発砲するよう部隊に命じている」と報じ、大きな波紋を呼んでいます。この報道に対し、イスラエル軍は読売新聞の取材に対し「記事の内容を否定する」と回答しました。しかし、人道支援団体や国際社会からは、この疑惑に対する強い非難の声が上がっており、ガザの人道状況はかつてないほど悪化の一途をたどっています。食料を求める人々が、命を落とす危険に晒されている現状は、国際的な関心と緊急の対応を必要としています。

参考文献

  • 読売新聞オンライン:ガザ支援物資配布所で800人超が銃撃死、米イスラエル主導で配布開始後…食料難の住民「飢えか配布所で死ぬか」. (2025年7月15日).