静岡県伊東市で、学歴詐称疑惑により失職した田久保真紀前市長(55歳)が、12月7日告示、14日投開票の市長選に再び立候補を表明し、全国的な注目を集めています。今回の選挙は、田久保氏が失職に至るまでの経緯と、彼女が主張し続けた「卒業証書19.2秒」というキーワードが、今年の流行語大賞候補にノミネートされたことで、これまで以上に多くの関心を集めることとなっています。ジャーナリストの小林一哉氏は、9人が立候補を表明する大混戦の様相から、再選挙になる可能性も指摘しています。
「学歴詐称疑惑」から失職、そして再出馬へ
田久保氏の学歴詐称疑惑は今年6月に発覚しました。彼女は市議会議長らに卒業証書と称する書類を「チラ見せ」したものの、その後の市議会百条委員会では「19.2秒見せた」と主張し、一連のやり取りが虚偽であると認定されました。この混乱を受け、市議会は全会一致で不信任決議を採択。田久保氏は市議会解散で抵抗しましたが、出直し市議選を経て、10月31日の臨時議会で再度不信任決議案が可決され、失職に至りました。
しかし、この失職で「田久保劇場」の幕が下ろされたわけではありませんでした。田久保氏は11月19日に会見を開き、「伊東市政の改革は道半ば、常に市民の先頭に立って戦う、強く美しい街を再生する」と述べ、再出馬を表明。疑惑に対する説明責任が問われた際も、これまで通り刑事告発を理由に回答を拒否し続けました。
2025年10月31日、伊東市役所を出る田久保真紀前市長
支持者の存在と「追い風」の可能性
田久保氏には、熱心な一定数の支持者が存在します。今年5月の市長選では、約1800票差で元市長の小野達也氏(62歳)を破り、1万4684票を獲得して初当選しました。前回の選挙では、小野氏が掲げた図書館建設に反対し、主に女性層の支持を得た形です。今回の選挙では、一連の騒動に反感を抱く市民の票は期待できないものの、田久保氏を熱心に支持する市民は、直近の選挙結果などから多く見積もって4000~5000人いると見られています。
現在、田久保氏を含め9人が立候補を表明しており、さらに立候補の動きも予測され、大乱戦が予想されます。現状だけを見れば田久保氏の当選は難しいとされていますが、もし彼女に何らかの「追い風」が吹けば、兵庫県の斎藤元彦知事(47歳)のように、少ない基礎票から一気に票数を押し上げて勝利する可能性も指摘されています。今回の出直し市長選の最大の焦点は、田久保氏が再び「市長の椅子」に座るような結果になるかどうかです。
「卒業証書19.2秒」がもたらした注目
田久保氏に吹く可能性のある「追い風」の一つが、2025年の新語・流行語大賞の候補に選ばれた「卒業証書19.2秒」です。これは、田久保氏が市議会議長らに卒業証書と称する書類を「チラ見せ」したことを否定し、「19.2秒見せた」と主張した一連のやり取りを象徴する言葉です。百条委員会は、この「19.2秒」が書類を見せた時間ではなく、一連のやり取り全体の時間であると認定し、田久保氏の「チラ見せ」否定を虚偽と判断しました。
この伊東市政の一連の混乱は、テレビのワイドショーなどで連日面白おかしく報じられ、その結果、「卒業証書19.2秒」が流行語大賞の候補30語にノミネートされる事態となりました。12月1日に発表された今年の流行語大賞では、高市早苗首相の「働いて働いて働いて働いて働いてまいります/女性首相」が選ばれ、「卒業証書19.2秒」は選外となりました。しかし、伊東市発の新語・流行語として、田久保氏が市長選を戦う上での思惑は外れたものの、社会に大きな爪痕を残したことは間違いありません。
伊東市長選は、学歴詐称疑惑、不信任決議、そして再出馬という異例の展開に加え、「卒業証書19.2秒」が象徴する全国的な注目を集め、その行方は予断を許さない状況です。市民の判断と、どのような結果が伊東市政の未来を形作るのか、引き続き高い関心が寄せられています。





