参政党・神谷宗幣代表の「アテンションエコノミー」戦略:選挙期間中の発言変遷と矛盾

参議院選挙期間中、過激な発言を繰り返し注目を集めた参政党の神谷宗幣代表。ニュース番組で解説する藤井セイラ氏は、神谷氏の手法を「炎上によって注目を集める『アテンションエコノミー』の政治版」と評し、その主張が矛盾に満ちているにもかかわらず支持者が存在する理由に疑問を呈しています。本稿では、神谷氏の一連の言動とその背景にある戦略を深掘りします。

選挙期間中に露呈した参政党の発言の変節

参政党の選挙期間中の態度の変遷は目覚ましいものがありました。最初に掲げた公約と相反する発言や、前日と翌日で話が食い違うケースが頻発し、連日ニュースやSNSのトレンドを賑わせました。

その典型例として、選挙戦初日の7月4日、神谷代表が「日本人ファースト」を掲げて行ったスピーチが挙げられます。彼は、「外国人の資本が次々と流入し、東京の土地やマンション、インフラ、水源が買われている」「外国人の方々が集団で万引きを行うなど大きな犯罪が発生している。こうした人々が違法薬物を売り出せば治安が悪化し、窃盗や強盗が始まれば安心して暮らせなくなる。我々は治安維持を図る」と述べました。

滋賀県米原市で街頭演説を終え移動する参政党の神谷宗幣代表(2025年7月17日)。彼の選挙戦での発言と「アテンションエコノミー」戦略が注目される。滋賀県米原市で街頭演説を終え移動する参政党の神谷宗幣代表(2025年7月17日)。彼の選挙戦での発言と「アテンションエコノミー」戦略が注目される。

このスピーチは、聞き取りやすく、平易な言葉で構成されており、複雑さがないため、多くの人が信じてしまう可能性がありました。しかし、その内容はわずかな事実と、明らかな虚偽、そして個人的な予測が混在したものでした。

「日本人ファースト」主張への批判と神谷氏の驚くべき釈明

参政党はこれまで、公式サイトなどで明確に「反グローバリズム」を掲げてきました。「日本人ファースト」という言葉は支持層から熱狂的に支持された一方で、「排外主義を煽る」「外国人への差別感情につながる」「外国人労働者なしには日本社会はもはや成り立たない」といった強い批判が噴出しました。メディアでは、この主張に不安を感じている在日外国人の声も紹介されるようになりました。

こうした批判が高まる中、神谷氏は7月15日のTBSの取材に対し、驚くべき発言をしました。彼は「これは選挙のキャッチコピーですから、選挙の間だけなので、終わったらそんなことで差別を助長するようなことはしません」と明言したのです。これは、差別を助長する可能性のあるキャッチコピーが、有権者の注目(アテンション)を引くために有効であるため、選挙期間中のみ使用すると公に認めたに等しいものでした。

さらに、神谷氏は「この言葉は私が提案したというよりも党員さんがアンケートで出してきたものを私が見てそれに応じた」と述べ、自身の発案ではなく、党員アンケートの結果を取りまとめたものだと責任逃れとも取れる発言をしました。

翌日には「想定外」発言で再度の転換

神谷氏のこの発言には誰もが驚きましたが、さらに驚くべきはその翌日の行動でした。彼はX(旧Twitter)に「まさかキャッチコピーであんな切り取られ方をするとは想定していませんでした」と投稿。支持者に対しては、あくまで「日本人ファースト」の主張を貫くと強調し、前日のTBSでの発言をあたかもメディアによる「切り取り」であるかのように示唆しました。

東京都調布市で参政党東京地区さや候補の応援演説を行う田母神俊雄氏と熱心に耳を傾ける聴衆(2025年7月15日)。参政党の主張が支持を集める背景の一端。東京都調布市で参政党東京地区さや候補の応援演説を行う田母神俊雄氏と熱心に耳を傾ける聴衆(2025年7月15日)。参政党の主張が支持を集める背景の一端。

一連の神谷氏の言動は、選挙期間中の発言が、その場しのぎの目的や、特定の層からの注目を集めるための「アテンションエコノミー」的な戦略として利用されている可能性を示唆しています。主張の一貫性の欠如は、有権者にとって情報の混乱を招き、政治への信頼性を損なう要因ともなりかねません。

結論

参政党の神谷宗幣代表の選挙期間中の発言は、その内容の変遷と矛盾が顕著であり、注目を集めるための「アテンションエコノミー」戦略の一環として位置づけられると分析されます。彼の「日本人ファースト」発言に対する釈明や、その後のSNSでの「想定外」発言は、主張の一貫性よりも、選挙戦術としての効果を優先している可能性を示唆しています。こうした政治家の言動は、有権者による正確な情報判断を困難にし、政治に対する不信感を生む可能性があります。

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