青少年のADHD・うつ病治療件数、韓国で3倍に急増:教育省に抜本的対応求める声

韓国において、青少年期の注意欠如・多動性障害(ADHD)および抑うつ症状の治療件数が過去8年間で著しく増加しており、社会的な懸念が高まっています。この深刻な状況に対し、市民団体からは教育省に対し早急な抜本的対策を求める声が上がっています。

急増する青少年期の精神疾患治療件数とその影響

市民団体「良い教師運動」が2024年7月13日に公表した分析結果によると、韓国の5歳から19歳の児童・青少年でADHDおよびうつ病の治療を受けた者は合計24万800人に上りました。これは同年齢層の人口の3.7%に相当し、約27人に1人が何らかの精神疾患の治療を受けている計算となります。

2017年の患者数はADHDが4万9501人、うつ病が3万1362人で、合計8万863人でした。この数字と比較すると、わずか8年間で治療件数が約3倍に急増したことになります。「良い教師運動」は、この増加傾向が続けば、2030年にはADHD患者が30万人、うつ病患者が15万人を超える可能性があると予測しており、この事態を「国家的危機」と強く警鐘を鳴らしています。

韓国の学校や教育現場で精神的な問題を抱える可能性のある青少年(イメージ)韓国の学校や教育現場で精神的な問題を抱える可能性のある青少年(イメージ)

既存の教育現場支援制度の限界

「良い教師運動」は、現在の教育現場で実施されている「情緒・行動特性検査」や、専門相談教員による支援体制「Weeプロジェクト」といった既存制度の限界を指摘しています。現状として、専門相談教員の配置率は全体の50%未満に留まっており、検査結果に基づいて二次医療機関への連携が必要と判断されたケースでも、実際に連携が実現していない例が27%以上に及ぶと報告されています。

政府レベルの包括的支援体制確立への提言

これらの状況を踏まえ、同団体は「学校や教員単位で対応できるレベルを超えており、政府レベルでの対応が必要不可欠である」と強調しています。特に、小学校段階で反復的な問題行動が見られる児童に対しては、専門家と連携できるシステムと、そのための法的根拠の整備が喫緊の課題であると主張しています。

「良い教師運動」は、韓国教育省に対し、「もはや責任を回避せず、早期発見と体系的な支援体制の確立に直ちに取り組むべきだ」と強く促しており、青少年たちの心の健康を守るための迅速かつ抜本的な政策実施を求めています。

結論

韓国における青少年のADHDとうつ病の治療件数急増は、単なる医療問題に留まらず、社会全体で取り組むべき深刻な課題となっています。この「国家的危機」に対し、教育省をはじめとする政府機関が連携し、早期発見から専門的な治療、そして教育現場での継続的なサポートまでを網羅する包括的な支援体制を確立することが、未来を担う青少年たちの健全な成長のために不可欠です。


参考文献