「飲まない世代」として知られてきたZ世代(概ね1997年〜2012年生まれ)の飲酒行動に、いま大きな変化が起きています。国際飲料市場調査会社IWSRの最新調査によると、2023年には過去半年間に飲酒したZ世代の割合が66%だったのに対し、2024年には73%にまで上昇。特に米国では、わずか1年で46%から70%へと急増し、全世代で最も顕著な伸びを示しました。このトレンドは、これまでZ世代が牽引してきた「ソバー・キュリアス(断酒志向)」やノンアルコール飲料の流行といった傾向と明らかに矛盾しており、その背景には何があるのか注目されています。
Z世代の飲酒トレンドの変化を示すイメージ:バーでグラスを傾け乾杯する若者たち
最新調査が示すZ世代の飲酒量急増の実態
IWSRが世界15カ国、約2万6000人を対象に実施したこの調査は、Z世代のアルコール消費が予想以上に伸びている現状を浮き彫りにしました。彼らはこれまで、健康志向やデジタルネイティブとしての特性から、飲酒を控える傾向が強いとされてきました。しかし、最新のデータは、Z世代が積極的にアルコールに手を伸ばし始めていることを示唆しています。この急激な変化は、飲料業界にとって新たなビジネスチャンスであると同時に、社会的な関心事ともなっています。
背景にある「可処分所得の増加」と経済的要因
IWSRの最高執行責任者であるリチャード・ハルステッド氏は、Z世代の飲酒行動の変化の主な背景として「可処分所得の増加」を指摘しています。Z世代の最年長層は現在20代後半に差し掛かっており、大学卒業後の就職難を経験する若者がいる一方で、労働市場への本格的な参入により収入が安定し始めています。米誌「フォーチュン」によれば、米バンク・オブ・アメリカは、Z世代が今後10年以内に累計36兆ドル(約5300兆円)もの所得を持つ「最も裕福な世代」になると予測しており、経済的なゆとりが飲酒頻度の増加に影響を与えているとみられます。
Z世代特有の飲酒行動と意識:「意図的に摂取を増やす」傾向
報告書は、Z世代が他の世代に比べてバーやクラブ、レストランなど外出先での飲酒を好み、多様な酒類を楽しんでいる点を特徴として挙げています。特にスピリッツ(蒸留酒)への嗜好が強い傾向が見られます。
さらに興味深いのは、Z世代の29%が「意図的にアルコール摂取を増やしている」と回答したことです。この割合は全世代の中で最も高く、ベビーブーマー世代(60歳以上)のわずか6%と比較すると顕著な差があります。また、Z世代の42%が「友人や知人が以前よりも飲むようになった」と感じており、実際にZ世代の飲酒量は、かつて20代で飲酒量が増加したミレニアル世代など他の世代と同水準にまで達しているとされています。
全世代にわたる飲酒傾向とZ世代の役割
ハルステッド氏は、これらの調査結果を受けて「飲酒量の節制はあらゆる世代に見られる傾向だが、アルコール売り上げ減少の責任はZ世代にはない」と述べています。これは、Z世代の飲酒量増加が、市場全体の飲酒量減少傾向を覆すものではないことを示唆しています。
報告書によると、過去半年間に飲酒した割合が最も高い世代はミレニアル世代で83%、次いでジェネレーションXが79%でした。一方、かつて「最も酒好き」と見なされていたベビーブーマー世代は全体的に飲酒を控える傾向にあり、過去2年間で飲酒者の割合が1%減少し、72%にとどまっています。ハルステッド氏は、「年を追うごとに、Z世代の飲酒者が労働市場に参入し、収入が増加するにつれて飲酒の頻度が高まるのは、かつてのミレニアル世代が辿った道と同じだろう」との見解を示しており、Z世代の飲酒トレンドが今後も市場に大きな影響を与え続ける可能性が高いと予測されます。
COURRiER Japon
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