【シンガポール=森浩】アフガニスタン東部ナンガルハル州で、農業支援に取り組んでいた医師、中村哲さん(73)が殺害された事件で、州政府のミヤヘイル知事は6日、産経新聞現地スタッフの取材に対し、事前に中村さんが襲撃を受ける可能性があるとの情報があったことを明らかにした。情報の詳細については明らかにしなかったが、中村さんに関する警備を強化していたという。
ミヤヘイル氏によると、武装グループは計5人で、2台の車に分乗し、中村さんが乗った車を追走。進行を遮った後、銃撃した。ボディーガードと運転手の計5人は即死状態だったとみられる。ミヤヘイル氏は、武装グループの詳細については語らなかったものの、「国外で犯行が計画された可能性も視野に入れている」とも示唆した。犯行には、アフガンなどで流通する自動小銃「AK47」(カラシニコフ)が使用されたとの見方も示した。
事件の目撃者は、武装グループは襲撃後に車の内部を確認し、頭を上げた中村さんを見て、「まだ生きている」と叫び、再度発砲したとも証言している。武装グループは裾の長い民族衣装「シャルワール・カミーズ」を着ており、顔は隠していなかったという。
アフガン国内では中村さんに哀悼の意を示す動きが広がっており、首都カブールでは5日夜、日本大使館周辺で追悼行事が開かれた。参加した市民はろうそくとともに日本とアフガンの国旗を並べ、中村さんの死を悼んだ。
中村さんの家族や所属していた非政府組織(NGO)「ペシャワール会」(福岡市)関係者は6日午後、遺体があるカブールに到着した。8日にも中村さんの遺体とともに帰国する予定。