日本の石破茂首相が参議院選挙の敗北にもかかわらず続投を決定したことで、日韓関係は当面、予期せぬ大きな変化を免れるものと見られています。石破首相は参院選翌日の21日に開かれた記者会見で、「国政の停滞を招いてはならない」と述べ、退陣を拒否しました。これを受け、周辺国もひとまずその動向を注視する構えです。特に、李在明(イ・ジェミョン)政権の対日関係に与える影響が注目されています。
石破首相の続投決定と背景
当初、石破首相の辞任が現実となれば、日韓関係に悪影響が大きいと懸念されていました。しかし、石破首相は「国政の停滞を招いてはならない」という強い意志を示し、続投を表明しました。この決定は、政権の安定維持を優先する意向の表れであり、国内外に一定の安心感を与えたと評価できます。周辺国、特に韓国は、この日本の政治状況が自国との外交関係にどう影響するか、引き続き慎重に見守っています。
李在明政権下の日韓関係への影響とこれまでの歩み
石破首相は、就任以来、日韓関係の安定化に前向きな姿勢を示してきました。先月、東京で駐日韓国大使館主催の「日韓国交正常化60周年行事」に主要閣僚を伴って自ら出席し、その意欲を示したことは注目に値します。また、李在明大統領とは同月、カナダで開催された主要7カ国首脳会議(G7サミット)の機会に初めて会談し、「日韓関係の安定的発展に向け緊密に意思疎通していく」ことで合意しました。両首脳は日韓シャトル外交の重要性を強調し、今年の韓中日首脳会議や10月に慶尚北道慶州で開催されるアジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議での再会談の可能性も取り沙汰されています。石破首相は、自衛隊の役割強化など防衛力の強化を主張する一方で、日韓間の歴史問題については比較的柔軟な認識を持っているとの評価も聞かれました。
続投後の歴史問題への懸念と課題
しかし、石破首相が昨年10月に首相に就任して以降、実際に歴史問題などに対して具体的な前向きな措置を取ることができるかについては、疑念の声も上がっていました。首相就任後の昨年12月に開かれた「佐渡金山追悼行事」では、日本政府代表が朝鮮人強制労働の事実を認めず、韓国側が改めて追悼式を別途開催する事態となりました。今回の参議院選挙の敗北は、日韓関係において日本政府がより積極的な動きを見せることを一層困難にするだろうと見られています。
排外主義の台頭と韓国政府の外交主導の可能性
今回の参院選では、右派の野党による「排外主義」的な言動が強く支持され、自民党の票を相当数浸食したと分析されています。この結果は、石破首相が日韓間の歴史問題などにおいて前向きな態度を示す上での制約となり得るという懸念を生んでいます。
参院選後、石破政権は国内政治に集中せざるを得ない状況にあるため、韓国政府が対日外交を主導する余地ができたという見解も存在します。神戸大学の木村幹教授はハンギョレ紙に対し、「この時期にリーダーシップを発揮して安定した日韓関係を築けば、李在明政権の外交力を示す効果も期待できる」と指摘しました。さらに、「中長期的には、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権時代に日米韓関係で日本が高めた視座を、李在明政権がそれに取って代わることもありうる」との見通しを示しています。
参議院選挙の結果を受け、記者会見で続投の意向を表明する石破茂首相
石破首相の続投は、日韓関係に一時的な安定をもたらす可能性がありますが、国内政治の課題、特に排外主義的な潮流の台頭は、歴史問題における日本政府の積極的な対応を制約する要因となり得ます。その一方で、石破政権が内政に注力する中で、韓国政府が対日外交において主導権を発揮し、新たな関係構築の機会を探る可能性も指摘されています。今後の日韓関係の進展は、両国の国内政治情勢と外交的努力に大きく左右されることでしょう。