韓国で外国人季節労働者の無断離脱が深刻化:農漁村の人手不足と対策の現状

韓国の各地で農漁村が直面する深刻な人手不足は、外国人季節労働者の存在によって一定程度緩和されてきました。しかし、これらの労働者の無断離脱が繰り返し発生し、地方自治体が対応策の策定に頭を悩ませる事態が続いています。特に指定された勤務地を離れて高賃金を得られる場所へと移動するケースが多く、これが不法滞在問題にも繋がりかねない状況です。

韓国の農村でジャガイモを収穫する外国人季節労働者たち韓国の農村でジャガイモを収穫する外国人季節労働者たち

深刻化する無断離脱問題とその背景

最近の事例では、今年5月2日にE-8(外国人季節労働者)ビザで入国し、全羅南道長城郡の農家に配属されたタイ国籍の労働者39人のうち14人が、7月2日に無断でモーテルから姿を消しました。漁村でも同様の事態が続いており、全羅南道高興郡では昨年10月に入国したベトナム国籍の労働者107人のうち、実に78人(72.9%)が今年2月までに指定勤務地を離れて離脱しています。

無断離脱の主な理由は、入国時に合意した賃金よりも高額な報酬が得られる職場を求めての移動です。外国人労働者たちは、専門のブローカーやメッセンジャーアプリなどを利用して韓国内での勤務先を探し、中には自ら不法滞在者となるケースも少なくありません。外国人季節労働者プログラムは、韓国の地方自治体が海外の自治体と覚書(MOU)を結び、その地域の住民を招く仕組みです。また、結婚移民者の海外在住親族(四親等以内)を招くこともあります。彼らは最大8ヶ月間指定地でのみ勤務し、契約終了後はビザの有効期限が切れ、帰国が義務付けられています。

データが示す離脱者の増加傾向

法務部の統計によると、韓国への外国人季節労働者の入国者数は近年急増しています。2017年には1,085人だったのが、2022年には12,027人、2023年には32,837人、そして昨年は57,269人に達しました。今年はさらに95,429人が割り当てられ、6月までに53,940人が既に入国しています。

入国者数の増加に伴い、離脱者の数も顕著に増加しています。2017年から2020年までは年間300人未満だった離脱者数が、2022年には1,151人まで急増しました。その後、2023年には925人、2024年には869人とわずかに減少傾向にあるものの、依然として高水準で推移しており、地方自治体は管理対策の強化を迫られています。地域別に見ると、全羅南道が2021年からの4年間で931人と最も多く、江原道が814人、全羅北道が576人、慶尚北道が405人、忠清南道が155人などとなっています。

専門家が提唱する「直接管理」の重要性

この外国人季節労働者の離脱問題の解決に向け、専門家は各自治体による国内外をまたいだ直接的な管理の必要性を強調しています。韓国で働きたいと希望する外国人が多いため、海外の現地では国別に高額な裏金がやり取りされるケースも多く、これが離脱の一因とも指摘されています。

慶尚南道地域は、プログラム導入当初から16の市・郡が外国人を直接管理する方針を徹底し、離脱率を大幅に抑制することに成功した模範事例となっています。慶尚南道の外国人労働者の離脱率は、2022年には6.6%(46人)でしたが、2023年には1.6%(49人)にまで低下しました。さらに昨年は0.8%(54人)にまで減少し、全国平均の離脱率(1.5%)の半分以下という低水準を維持しています。

韓国移民社会専門家協会のパク・チャンドク交流協力本部長は、「外国人労働者の離脱率を下げるためには、国内だけでなく海外での管理・監督の強化が不可欠だ」と述べ、営利団体などを通じた管理ではなく、政府や各自治体による直接的な管理体制の構築が求められると提言しています。

結論

韓国の農漁村における外国人季節労働者の無断離脱は、人手不足を一層深刻化させる喫緊の課題となっています。高賃金を求めての移動や不法滞在化を防ぐためには、単なる入国者数や短期的な対策に留まらず、海外での募集段階から帰国までのプロセス全体において、地方自治体と政府が連携し、より積極的かつ直接的な管理体制を確立することが不可欠です。慶尚南道の成功事例が示すように、徹底した直接管理こそが、この複雑な問題に対する持続可能な解決策の鍵となるでしょう。


参考文献: