兵庫県洲本市内で今月17日に開かれた全国縦断「正論」洲本講演会(産経新聞社、月刊「正論」、ホテルニューアワジ主催)。第40回正論大賞を受賞した外交評論家でキヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問の宮家邦彦氏は、「トランプ時代の日本の保守主義」と題して講演した。宮家氏は参加者約210人に向け、米国・トランプ大領領の再選で不安定さを増す世界情勢を解説するとともに、その中で日本が生き残るため強い保守政治の継続と国内保守勢力の結集を訴えた。
講演で宮家氏は80年代以降、米国は慢性的なドル高に伴い製造業が空洞化し「長期戦を戦えなくなった」と述べ、国力が相対的に低くなっている現状を解説した。
そうした状況におけるトランプ氏の大統領再選の理由について、「(トランプ氏が)格差社会に不満を持った『忘れ去られた人たち』の受け皿になったため」と説明した。さらに昨年、世界各国で行われた選挙でも既存のエリート層らが苦戦し、極左や極右など極端な主張を掲げる勢力が勝利するといった事例を紹介。こうした流れについて「トランプ氏ではなく、90年代の世界がつくった。トランプ氏がいなくなっても『トランプ現象』は残る」と指摘した。
宮家氏は、同様の動きが日本でも起こり得ると分析。兆しに触れながら、今後の選挙で「極左と極右に不満の票が流れ、健全な保守主義がどこかへ行ってしまう可能性がある」と危惧した。
さらに、世界レベルで不安定な動きが広がる中、今の米国にとっての脅威は中国であるとともに「現在の中国と、(先の大戦に突入する直前である)1930年代の日本とは似ている」と指摘。トランプ外交の本質は介入なき平和主義や、国際秩序は大国が決めればいいなどと考えている点にあると述べ、「80年間続いた『幸せな戦間期』は終わろうとしているのではないか」との見方を示した。
宮家氏は、そうした世界秩序がパラダイムシフトを迎えつつある中、日本が「勝ち組」として生き残るために不可欠となるのが「強い保守政治の継続と正しい軍事力の行使」と力説。「戦わずして勝つため、正しい軍事力を使える能力を持っていなければならない」と強調するとともに、現状としてバラバラの状態にある国内保守勢力の結集を訴えた。