中国の習近平指導部は、これまで世界と競うように進めてきた超高層ビルの建設に対し、今後は厳格な制限を課す方針を明確に打ち出しました。これは、共産党・政府高官が都市開発について議論する「中央都市工作会議」が10年ぶりに開催された場で示されたもので、急速な経済発展に伴うひずみや不動産不況が背景にあります。
10年ぶりの「中央都市工作会議」と政策転換
今月14日から15日にかけて北京で開かれた「中央都市工作会議」は、2015年12月以来の開催となりました。この会議では、中国の都市開発が「急成長から安定した発展期に入った」との認識が強調され、これまでの大規模開発路線を見直し、快適で住みやすい街づくりを進めるべきだとの方針が強く訴えられました。超高層ビルの建設を制限する動きは、安全性への懸念や必要性への疑問が国内外から噴出していたこと、そして深刻な不動産不況がその決定を後押しした形です。
中国の超高層ビル建設ブームとその問題点
かつて中国は、世界の超高層ビル建設を牽引してきました。現在、世界の高さ上位10位のビルのうち、5棟が中国に存在します。上海の上海タワー(632メートル)を筆頭に、広東省の深センや広州、天津、北京などにも500メートルを超える巨大な高層ビルが立ち並び、目覚ましい経済成長の象徴となっていました。
上海市中心部にそびえ立つ複数の超高層ビル群。中国の急速な都市開発と経済成長の象徴だが、今後は建設が厳しく制限される方針だ。
しかし、こうした大都市での超高層ビル建設ブームは、地方の中小都市にも波及しました。多くの地方政府が街のシンボルとして高層ビル建設を目指しましたが、不動産不況の深刻化により、工事が途中で中断したり、完成後も利用されずに放置される「幽霊ビル」化する問題が深刻化しました。今回の習指導部による方針転換は、こうした現実を踏まえ、より持続可能で住民の生活に根ざした都市開発へのシフトを示すものです。
今回の政策転換は、中国が単なる経済規模の拡大だけでなく、国民の生活の質向上と、経済発展の質の転換を重視し始めたことを示唆しています。超高層ビルの「量」から、都市の「質」へと焦点を移すことで、新たな段階の都市開発を目指す中国の方向性が明確になったと言えるでしょう。
参考文献:
- 共同通信. (2024年12月23日). 中国、超高層ビル建設を厳格制限へ 習指導部、方針転換. Yahoo!ニュース. https://news.yahoo.co.jp/articles/f8bb374c3a2f941ab5a6a03dd81e68f6d16c64b3