アメリカで日本の「軽」が熱い人気?小型車が示す“反骨精神”とは

超大型ピックアップトラックやSUVが市場を席巻する米国で、日本の軽自動車や軽トラック(軽トラ)が予想外のブームを巻き起こしています。その小さな車体と独特の魅力は、主流とは異なる“反骨精神”の象徴として、一部の米国人から熱烈な支持を受けています。しかし、日本の規格で製造されたこれらの車両を米国で走らせるには、連邦法や州法の厳格な規制をクリアするという困難が伴います。米紙「ニューヨーク・タイムズ」の取材から、その知られざる人気と課題に迫ります。

「これは買わないと」:軽トラオーナーの告白

バージニア州リーズバーグに住むアーロン・コーン(50)は、熱心な軽トラ愛好家の一人です。彼の愛車は、洗車で縮んだかのように小さい1991年製スバル・サンバー。ある日の午後、彼はこの白い軽トラの側面に、人気漫画『頭文字D』に登場する架空の店名「藤原とうふ店」の日本語ステッカーを貼り付けていました。コーンはコンサルタントとして働きながら、この軽トラで自宅周辺を走り回る日々を送っています。

アメリカで日本の「軽」が熱い人気?小型車が示す“反骨精神”とは

コーンが初めて実物の軽トラを目にしたのは3年前、自動車修理店でのことでした。以前から気になっていたという彼は、「これは買わないと、と思いました」と、その時の衝撃を語ります。日本市場向けに開発された軽自動車や軽トラックは、そのコンパクトさゆえに米国での輸入や車両登録には非常に手間がかかりますが、そのユニークさが逆にコレクターや愛好家の間で密かな人気を集めているのです。

米国に広がる「軽自動車クラブ」の熱狂

コーン夫妻は悪天候の中、バージニア州アレクサンドリアで開催された「キャピタル軽自動車クラブ」の会合へと向かいました。会場となったイェイツ・カーウォッシュ&ディテイリング・センターの駐車場は、ダイハツ・ハイジェット、ホンダ・アクティ、三菱・ミニキャブといった様々な軽自動車や軽トラックで埋め尽くされました。日本の軽自動車規格に則り、これらの車両はすべて全長3.4メートル以下、幅1.48メートル以下、直列3気筒または4気筒エンジンを搭載しています。

集まった軽自動車の多くは、オーナーの個性や遊び心が光る装飾が施されていました。シガーライター部分に「ミサイル発射」と書かれた赤いボタンが取り付けられていたり、ナンバープレートには「VRYSLW(ベリー・スロー)」や「ANARKEI(アナー軽)」といったユーモアあふれる文字が踊っていました。中にはバンパーに「芝刈り機くらいの馬力」を意味するステッカーを貼っている車もあり、大型車が支配する米国社会における軽自動車の“反抗的な”存在感を際立たせていました。この時代において、軽自動車は大きさや騒音、派手さを持たないことで、かえって異彩を放ち、大型SUVやセダンがひしめく中で慎重かつ際立つ存在として注目を集めているのです。コーンは「ガソリンスタンドに行くと、みんな『なんじゃこりゃ?』って驚きますよ」と、自身の体験を語りました。

結論:小型車に宿る“反骨精神”とその魅力

米国で日本の軽自動車、特に軽トラックが熱い視線を集める現象は、単なる珍しさだけでなく、現代社会における特定の価値観の表れとも言えるでしょう。大型化が進む自動車市場へのアンチテーゼとして、あるいは個性を追求する手段として、日本の「軽」は米国の愛好家たちに受け入れられています。輸入や登録の困難さを乗り越えてまでこれらの小さな車両を求める背景には、主流に流されない“反骨精神”と、そのサイズからは想像できないほどの大きな魅力が宿っているのです。

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