のどかな日本の原風景が広がる瀬戸内海の離島で、静かに、しかし確実に、ある異変が進行している。それは外国人、特に中国資本による日本の不動産購入だ。これまで手の届かなかったような場所まで海外からの熱い視線が注がれ、日本の「すみか」が密かにその姿を変えつつある。本稿では、瀬戸内海に浮かぶ小さな島、笠佐島で起きている土地買収の実態に迫り、地元住民が抱える複雑な胸の内、そして浮上する防衛上の懸念について深掘りする。
人口わずか7人の笠佐島に忍び寄る中国資本
中国資本による開発の動きが顕著に見られる場所の一つが、”瀬戸内のハワイ”とも称される山口県の周防大島から船でさらに約10分離れた笠佐島だ。周囲わずか4kmほどのこの小さな島は、タイやカサゴなどが釣れる絶好のポイントとして地元では広く知られている。
笠佐島に住民票があるのはわずか7人。そのうち実際に島で暮らすのは現在3人ほどだという。約25年前に移住してきたという住民は、温暖な気候を生かしてスイカ、ブルーベリー、トマトなど季節の野菜や果物を育てる自給自足の生活を送っている。「音も声も聞こえないのがいい。静かで、ここはとても良い場所。死ぬまでここにいると思って来た」と、島の魅力を語る。
瀬戸内海の穏やかな島々、その背景に忍び寄る外国人による不動産買収問題の影
そんな“終の棲家”と決めていた笠佐島に、今、想定外の異変が起きていると住民は語る。「中国人が土地を買って、山を崩して宅地にするための造成をしている」。この住民の話によると、新型コロナウイルスが流行し始めた頃から、外国人の姿が見られるようになったという。さらに、「この間も、すごい大金持ち風の人がすごい車に乗って見に来た」と、不穏な動きがあったことを明かした。
造成地の実態調査:チャーター船と登記簿が示す現実
はたして、このどこまでも穏やかな島が本当に外国資本に注目されているのだろうか。取材班は船をチャーターし、造成が行われているとされる場所へ向かった。船着き場に向かう途中、海岸には中国語が書かれたペットボトルが落ちていた。これは中国で販売されている有名食品メーカーの飲料水ボトルだという。
その後、船を走らせて向かったのは、島の反対側。ここにはもともと、人も住宅も存在しない森が広がる土地が続いていた。ところが、海からも電線らしきものが見え、重機も確認できた。土地の整備が進められているのだろうか。最新の航空写真を確認すると、島の一部で広範囲にわたって木々が伐採されている様子がはっきりとわかる。
さらに土地の登記簿を調べてみたところ、2つの区画が、いずれも中国・上海に住所を持つ中国人らしき人物の所有となっていることが判明した。中国人が取得したとされる土地には、今のところ、船から確認する限りでは建物のようなものはまだ建っていないように見える。
住民の複雑な胸の内とSNS上の反応
笠佐島の住民は、「私たちは住んでいる者としては、別に何かをされたとか、被害を被ったとか、そういうことはありませんので」と語る一方で、将来への懸念を口にする。「心配とか不安とかってありますか?」「それはありますよ、(この土地が)みんな中国人になったら私たち(日本人)の方が少ないじゃないですか」。
この島は、中国人にとって本当に魅力的な場所なのだろうか。最近中国のSNSに投稿された笠佐島に関する書き込みには、「安いね、どうやったら買えるの?」「すごく欲しい」といった購入意欲を示すコメントが多数見られた。しかも、「この島を買いたい」と書き込んだ人に対し、「買いなよ。買ったら中国国旗を差すのを忘れないで」という挑発的な声さえあった。
こうした現状に、住民票が笠佐島にあり、たまに釣りに訪れるという人は率直な思いを口にする。「日本人がねえ、おらんのだけど仕方がないよね、不便で。どういうても、売り手と買い手だからね。本当はここから岩国が近いからね、岩国の米軍基地が」。
防衛上の懸念:近接する自衛隊・米軍基地
この笠佐島周辺には、海上自衛隊の呉基地やアメリカ軍の岩国基地も位置している。そのため、外国人による土地買収の動きに対し、防衛上の不安を口にする声も聞かれた。国の安全保障に関わる重要施設周辺の土地利用については、近年その規制の必要性が叫ばれている。
土地売却業者のコメントと今後の展望
日本の昔ながらの離島をめぐり、海外からの熱い視線と地元住民の不安が交錯する中で、取材班は中国人らに土地を売却したとされる業者に現地で取材を試みた。しかし、業者からは「現在、誹謗中傷や脅迫などもあり営業できない状況となっており、とても取材に答えられる状況にありません」と電話でコメントするのみだった。
過疎化が進む日本の離島地域における土地取引は、経済活性化の一方で、日本の土地所有のあり方、安全保障への影響、そして地域コミュニティの維持といった多角的な課題を突きつけている。こうした動きは、笠佐島だけでなく、全国各地で今後さらに表面化する可能性を秘めており、今後の動向が注目される。
参考文献
- FNNプライムオンライン: 外国人による日本の不動産購入シリーズ「買われる“すみか”」瀬戸内海の人口7人の笠佐島にも中国資本の影が…
https://news.yahoo.co.jp/articles/3cbeb6b27366a567c8041b120978a5c43c5f5809