花火大会「有料席」値上げ半数超:一般席とプレミアム席で価格7倍差の二極化へ

国内の夏季を彩る花火大会において、観覧エリアへの「有料席」導入が定着し、さらにその価格設定において顕著な変化が見られます。2025年の花火大会では、有料席を導入する大会数が過去最多を更新し、半数以上の大会で値上げが実施されることが判明しました。特に注目すべきは、一般席と高額なプレミアム席との間で、価格差が約7倍にまで拡大する「二極化」戦略が加速している点です。

花火大会有料席の導入拡大と継続的な値上げ傾向

国内主要106の花火大会を対象とした調査によると、約8割にあたる83大会で観覧エリアに「有料席」が導入されていることが明らかになりました。2025年には新たに5大会が有料席の販売を開始し、開催中止による減少分(2大会)を差し引いても、前年の80大会から3大会の純増となりました。有料席を導入した花火大会の数は、連続したデータが取得可能な2023年以降で最多を記録しています。
さらに、2024年から継続して有料席を導入している78大会のうち、半数を超える42大会で2025年開催分の有料席が値上げされることが判明しました。前年と同数の42大会が価格を引き上げており、花火大会における有料席の価格上昇傾向が依然として続いていることが伺えます。

2025年花火大会の有料席で値上げが半数以上を占める現状を示すイメージ2025年花火大会の有料席で値上げが半数以上を占める現状を示すイメージ

「価格二極化」戦略の加速:一般席とプレミアム席の格差拡大

花火大会の有料席におけるチケット料金は、観覧席の種類によって大きく異なります。最も安価な「一般席(最安値)」の平均価格は5,227円で、前年比1.8%(92円)の増加に留まりました。これは、2024年開催時の7.7%増と比較すると、価格上昇幅が縮小しています。
一方、最前列や広い区画を確保したテーブル席、ソファ席、グランピングシート席など多様な「プレミアム席(最高値)」の平均価格は、前年比7.2%(2,422円)増の3万6,193円と大幅な上昇を見せました。2024年開催時から大幅に価格帯を引き上げた大会が目立ち、最高額は「2025 松江水郷祭湖上花火大会」の定員4名「VIPテーブル席」の12万円でした。

日本の主要花火大会における有料席の導入状況と価格帯の分布を示すグラフ日本の主要花火大会における有料席の導入状況と価格帯の分布を示すグラフ

観覧客誘導のための警備員人件費や花火費用など、物価高騰による運営コストの増大は、大会維持のために有料化や値上げを余儀なくさせる主要因です。2025年開催では、この運営コスト増への対応として、低価格の一般席は席数拡充や種別細分化で価格据え置きや僅かな値上げに留める一方、最も花火を見やすいロケーションの席種では価格上限を大幅に引き上げ、5万円以上のプレミアム席を設置する大会が多く見られました。
この結果、一般席とプレミアム席の平均価格差は6.92倍に達し、データのある2019年以降で過去最大となりました。これは、花火大会が多様な観覧ニーズと財源確保の両立を図るため、有料席の価格設定において「二極化」戦略を積極的に推進している実態を示しています。

結論

花火大会の有料席は、導入数の増加と半数以上の大会での値上げというトレンドに加え、価格設定の「二極化」が鮮明になりました。運営コストの増大という背景は共通しつつも、低価格帯の一般席と高価格帯のプレミアム席で戦略的に価格を分けることで、幅広い観客層への対応と大会運営の持続可能性を追求していると言えます。今後もこの二極化傾向は強まる可能性があり、花火大会が多様な形で日本の夏の風物詩としての地位を確立していくことでしょう。

参考文献

  • 帝国データバンク:「花火大会」有料席導入状況・価格動向調査(2025年開催分)