近年、日本においてガソリン価格の高騰と生活コストの上昇が続く中、自動車を所有する人々にとって、税金は非常に大きな負担となっています。特に、ガソリン税の暫定税率に関しては、先の通常国会で野党7党が廃止法案を共同提出し、衆議院では可決されたものの、参議院では与党が過半数を維持していたため廃案となりました。しかし、今回の参院選における与党の大敗を受け、8月1日から召集が見込まれる臨時国会において、この暫定税率の廃止が決定する可能性が高まっています。これにより、ガソリン1リットルあたり25.1円という上乗せ分が撤廃される見込みですが、日本の自動車税制には依然として実質的に同じ対象に複数の税金が課される「二重課税」や「三重課税」といった構造的な問題が放置されており、自動車ユーザーの不満は限界に達しています。
「三重課税」に苦しむ日本の自動車ユーザー
現在の日本の自動車税制では、ガソリンには「揮発油税」と「地方揮発油税」が課せられ、さらにその上に「消費税」がかかるという形で、実質的に二重の税負担が生じています。加えて、自動車本体の取得時・保有時・走行時にもそれぞれ「自動車税(軽自動車税)」、「自動車重量税」、「環境性能割(旧自動車取得税の代替)」などが上乗せされる構造です。これら全てが「自動車を所有し、利用すること」に対して課せられており、環境負荷への配慮という名目があるものの、日々の生活に車が不可欠な地方在住者にとっては、実質的に「生活必需品への課税」に等しい状況です。
ガソリンスタンドで給油する車の様子と高騰する燃料価格。日本の自動車税制がもたらすユーザーの負担を示すイメージ。
このような「三重課税」とも言える複雑で高負担な税制は、自動車ユーザーの家計を圧迫し、新車購入や車の維持に対する意欲を削ぐ要因にもなっています。今回のガソリン暫定税率の廃止は一歩前進であるものの、根本的な構造問題の解決には至っておらず、次のステップとして自動車関連税制全体の抜本的な見直しが強く求められています。
国際比較で浮き彫りになる日本の「複雑かつ高負担」な税制
日本の自動車ユーザーが負担する税金は、世界的に見ても類を見ないほどの「重税構造」の下にあります。国土交通省のデータによれば、自動車の購入時から廃車までにかかる取得時課税(環境性能割など)、保有時課税(自動車税・軽自動車税)、走行時課税(ガソリン税・軽油引取税など)の9種類に及ぶ税金の総額は年間約9兆円に達し、これは国の租税収入全体の約8%を占める巨大な規模です。
一方で、欧州の主要国ではよりシンプルで合理的な課税体系が導入されています。例えばドイツでは、CO2排出量と車両重量に基づいた分かりやすい課税システムを採用しています。フランスでは「ボーナス・マルス(Bonus-Malus)」方式と呼ばれる制度があり、電気自動車(EV)などの環境性能の高い車には補助金を支給し、排出量の多い車には追加課税をすることで、消費者の環境に優しい車選びを誘導しています。アメリカの場合、州ごとの登録料とガソリン税が主な負担であり、購入時や保有時の課税は日本に比べて限定的です。
これらの国際比較からも明らかなように、日本の自動車税制は「複雑かつ高負担」の代表格と言えます。税の種類が多く、計算方法も煩雑であるため、ユーザーは自身の負担を正確に把握しにくい状況にあります。
自動車税制改革への期待と課題
ガソリン暫定税率の廃止が現実味を帯びる中、日本の自動車税制全体が抱える「三重課税」や「複雑で高負担」な構造は、次に議論すべき喫緊の課題として浮上しています。ユーザーの負担を軽減し、よりシンプルで透明性の高い税制へと改革することは、自動車産業の活性化だけでなく、国民の生活の質向上にも直結します。
諸外国の事例を参考にしつつ、環境負荷への配慮とユーザー負担のバランスをどのように取るか、そして地方における自動車の必要性を考慮した公平な税制構築が、今後の臨時国会や政府の重要な検討事項となるでしょう。国民の生活に密接に関わる自動車税制の抜本的な見直しが、今こそ強く求められています。
参考資料
- ベストカーWeb編集部
- Adobe Stock
- 国土交通省
- Yahoo!ニュース