株式会社ソーシャルラボが2025年7月31日、TBSの番組「報道特集」が放送法に違反している可能性があるとして、監督官庁である総務省に対し、調査および行政指導の義務付けを求める訴訟を東京地方裁判所に提起しました。この訴訟は、メディアの「政治的公平性」や「報道の多角的論点提示」が焦点となっています。
訴訟の背景:放送法第4条と原告の主張
今回の訴訟の主要な争点は、放送法第4条第1項に定められた番組編集の原則です。この条文は、「政治的に公平であること」や「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」などを放送事業者に義務付けています。原告であるソーシャルラボは、今年3月の千葉県知事選に出馬した立花孝志氏、そして7月の参議院選挙で複数の候補者を擁立した参政党について、「報道特集」が選挙期間中に一方的に批判的な内容を放送したと主張しています。これは放送法第4条の定める公平性や多角性への違反にあたるとして、総務省に対し番組内容の調査と、必要に応じたTBSへの行政指導を求めています。
提訴の狙いと懸念される点
この日、ソーシャルラボの代表取締役である新田哲史氏が東京・霞が関の司法記者クラブで記者会見を開きました。新田氏は、「ネット時代において、放送法に基づく政治的公平性が果たして機能しているのか、また時代に即しているのかという問題を提起したい」と述べ、今回の提訴の意図を説明しました。しかし、元新聞記者であり、政治ニュースを扱うYouTubeチャンネルを運営している新田氏の背景を踏まえ、記者からは「放送について『お上(政府)に取り締まってほしい』と求めているように見える」との懸念が示されました。これに対し新田氏は、今回の提訴が特定の政治家や政党との関わりを持たないことを明言しつつも、今後、立花氏や参政党に意見書の提出を依頼する可能性も示唆しました。
新田哲史氏(中央)が東京・霞が関の司法記者クラブで記者会見を開き、ソーシャルラボによるTBS「報道特集」への放送法違反提訴について説明する様子。
各関係機関の反応
本件に関して、弁護士ドットコムニュースの取材に対し、総務省は「訴状がまだ届いていないため、コメントは差し控えます」と回答しました。また、TBS広報室も「本件の訴訟当事者ではないため、コメントはございません」としています。
この訴訟は、日本のメディアにおける報道の公平性、放送法の現代的な解釈、そしてデジタル時代における情報倫理のあり方について、今後の議論を深める一石を投じるものとして注目されます。
参考文献:
- 弁護士ドットコムニュース