2025年1月6日から3月12日の期間、新NISA口座で買われた日本株の最新ランキングが、主要ネット証券5社の独自集計により明らかになりました。前回トップのNTTに代わり三菱商事が首位に浮上し、その背景には個人投資家のユニークな投資行動と市場の動向が深く関係しています。金融ジャーナリストの岡村友哉氏の分析を交え、新NISAにおける注目すべき投資トレンドを解説します。
個人投資家に見られる「逆張り」志向の分析
新NISAの買い付けランキングで三菱商事が首位、NTTは2位に後退しました。株式アナリストの岡村友哉氏は、この変化の裏には日本の個人投資家に広く見られる「逆張り」志向があると指摘します。三菱商事は2024年5月に上場来高値3775円を記録した後、2025年4月には2200円台まで値下がりしていました。
岡村氏によると、商社株は日本株が見直される局面で中心的な役割を果たす銘柄です。しかし、今年1月から3月にかけては円高進行により海外収益の多い商社株が売られやすい状況にありました。その値下がりのタイミングでNISAの買いが入った形です。さらに、3月17日にウォーレン・バフェット氏が商社株の買い増しを報じられたことで株価は持ち直しました。日本の個人投資家は、最高値を追いかける順張りよりも、下がった銘柄を安値で買うことで安心感を得る傾向があるといいます。
新NISA投資トレンドを分析する金融ジャーナリスト岡村友哉氏
「思考停止型」の投資と「ロマン枠」銘柄の台頭
新NISAのもう一つの顕著な傾向として、岡村氏は「思考停止型の買い」を挙げます。これはNTTやJTといった銘柄に典型的に見られる現象で、本来銘柄や買い時を選ぶ株式投資において、NISAでは毎月決まった日にオルカン(全世界株式インデックスファンド)を買うような感覚で、同じ銘柄を買い続ける投資家が一定数存在するというものです。これらの銘柄は配当狙いが強く、その存在自体が「オルカンの株式版」のようになっていると岡村氏は分析します。
また、ランキング9位のメタプラネットや18位のリミックスポイントは、岡村氏が「ロマン枠」と表現する投資スタイルを示唆しています。これらは暗号資産のビットコインに関連する銘柄です。2025年1月のトランプ氏の大統領就任と、彼が暗号資産を優遇する政策を打ち出すという思惑から、ビットコインに積極投資するメタプラネットなどに資金が振り向けられたと考えられます。暗号資産の値上がり益には課税されますが、NISA口座で暗号資産関連企業の株価が上がった場合は非課税となる点が魅力です。しかし、業績の裏付けに乏しく値動きの荒いこれらの株をNISAで買うことは、初心者には推奨されない高リスクな投資といえるでしょう。
結論
2025年新NISAにおける日本株の買い付け動向からは、個人投資家の多様な戦略と心理が読み取れます。市場の動向を見極め「逆張り」を行う投資家、配当を重視し継続的に買い続ける「思考停止型」の投資、そして暗号資産関連株のような「ロマン枠」を追求する動き。それぞれのスタイルにはメリットとリスクが存在します。特に初心者の方は、リスクを十分に理解し、自身の投資目標に合った堅実な銘柄選びと分散投資が成功への鍵となるでしょう。
参考資料:
- AERA Money 2025夏号