米コロラド州に住むアンジェラ・クレイグさんは、最期の瞬間まで原因不明の体調不良に苦しみ、深い苦悩と苛立ちの中で日々を過ごしました。医師らは彼女の活発な生活とは裏腹に、突然の健康悪化の理由を突き止めることができませんでした。2023年、43歳だったクレイグさんは約2週間にわたり家族や友人の助けを借りて病院や救急診療所を巡りましたが、毎回原因不明のまま帰宅を余儀なくされました。彼女は家族にテキストメッセージで自身の症状を訴え続けていました。
アンジェラ・クレイグさんと夫ジェームズ被告(2016年撮影)、フェイスブックの投稿より
奇妙な症状は10日間続き、最終的に脳死と診断されるまでに悪化しました。クレイグさんは最期に義理の姉レニー・プレイさんに「なぜ私はつらいの?」と問いかけたと言います。それから2年以上が経過した先月30日、夫で6人の子供の父親であるジェームズ・クレイグ被告が、プロテインシェイクに毒物を混入し妻を殺害した罪で有罪評決を受けました。歯科医である彼は、仮釈放なしの終身刑を言い渡されています。ジェームズ被告は起訴内容を否認し、周囲には妻が自殺願望を持っていたと話していました。しかし、友人や家族の証言は、献身的な母親であったクレイグさんが不可解で悪化していく体調に苦しみ、活動的な日常生活を手放さざるを得なくなった様子を鮮明に浮き彫りにしました。
不可解な体調悪化と診断の迷宮
アンジェラ・クレイグさんの体調不良は、当初は軽度に見えましたが、急速に悪化していきました。家族や友人たちは彼女を何度も病院へ連れて行きましたが、MRI、CTスキャン、血液検査など様々な検査が行われたにもかかわらず、異常は見つかりませんでした。この診断の迷宮は、クレイグさん自身の不安と苛立ちを募らせる原因となりました。彼女は家族へのテキストメッセージで、「頭が働かない」「薬を飲まされたような感じ」といった奇妙な感覚を繰り返し訴えていました。医療従事者が原因を特定できない中、クレイグさんは自身の症状に対して内耳炎や糖尿病の可能性を疑うなど、自ら病気の兆候を探していました。
プロテインシェイクと症状の具体的な経緯
2023年3月6日、クレイグさんの悪夢は、歯科医院に出勤する前に夫が作ってくれたプロテインシェイクを飲むことから始まりました。検察によると、夫妻は普段からお互いのためにシェイクを作る習慣があったとのことです。シェイクを飲んだ後、運動を終えたクレイグさんはだるさを感じ、「頭が変でめまいがする。すごく奇妙」と夫にテキストメッセージを送りました。この日、夫は彼女を病院に連れて行きましたが、異常は見つからず帰宅。翌日には「薬を飲まされたような感じ」とさらに深刻なメッセージを送っています。家族に糖尿病の病歴があることから、食事も運動もしていないのに血糖値が高いことに気づき、糖尿病の可能性も考えていました。診断がつかない中で、クレイグさんからのテキストメッセージの頻度は増し、不安と苛立ちが募る様子がうかがえました。
最終的に、長年にわたる妻の謎の体調不良は、夫による計画的な毒殺であったことが裁判で明らかになりました。アンジェラ・クレイグさんの最期の言葉「なぜ私はつらいの?」は、この事件の悲劇的な結末を象徴しています。