【ソウル聯合ニュース】日本による植民地時代に強制徴用され労働を強いられた韓国人被害者の孫が、日本製鉄(旧新日本製鉄)に対し損害賠償を求めた訴訟で、ソウル中央地裁が6月に日本製鉄側に1億ウォン(約1000万円)の支払いを命じる判決を下したことが2日までに明らかになりました。今回の判決は、長年にわたる日韓間の「徴用工問題」における新たな展開として注目されており、提訴した被害者の孫が現職の裁判官である点も話題となっています。
徴用工訴訟の新たな展開と背景
今回の訴訟における被害者は1922年生まれで、1944年4月ごろ、日本の福岡県にあった日本製鉄の工場で過酷な労働を強いられた後、日本の敗戦を機に帰国しました。被害者は2015年に死去しましたが、その遺族が2019年3月に日本製鉄への損害賠償を求める訴訟を提起しました。特に、この遺族である孫が韓国の現職裁判官であることから、今回の判決は法的、そして日韓関係の観点から一層の関心を集めています。
ソウル中央地裁の庁舎外観。徴用工訴訟の判決が下された裁判所として、日韓関係の注目を集めています。
消滅時効の争点と裁判所の判断
他の多くの「徴用訴訟」と同様に、今回の裁判でも賠償請求権の「消滅時効」が主要な争点となりました。韓国では、大法院(最高裁)が2012年に初めて徴用被害者の賠償請求権を認めました。日本製鉄側は、この2012年の大法院判決から3年が経過した時点で消滅時効が成立したと主張しました。しかし、ソウル中央地裁は、日本企業に対する賠償命令が確定した2018年を時効の起算点とみなし、消滅時効は成立していないとの判断を示しました。この時効に関する解釈の違いは、今後の類似訴訟にも大きな影響を与える可能性があります。
結論
ソウル中央地裁が日本製鉄に賠償を命じた今回の判決は、「徴用工問題」を巡る日韓間の法廷闘争において重要な一歩となります。特に消滅時効の解釈に関する裁判所の判断は、他の未解決の徴用工訴訟や今後の日韓関係に新たな影響を及ぼすことが予想されます。この問題は、両国間の歴史認識と未来志向の関係構築にとって、引き続き重要な課題であり続けるでしょう。