元財務官僚で経済学者の高橋洋一氏が2日、テレビ番組で、戦後80年となる8月15日の終戦の日に石破茂首相が談話を発表する可能性について言及し、注目を集めています。参院選での過半数割れを受け、「石破降ろし」の声が上がる中でも、石破首相は続投に意欲を示しており、その背景には戦後談話を巡る思惑があると見られています。
談話発表の動機と報道の真偽
高橋氏は、石破首相が首相続投に意欲を示す理由について、「宿敵」と目される安倍元首相の戦後70年談話を「上書きしたい」との見方を示しました。石破首相は参院選の街頭演説でも各地の空襲被害に触れるなど、大戦の教訓を学ぶ必要性を強く訴え、戦後80年の検証に対する並々ならぬ思い入れを公言してきました。
一方、1日には石破首相が戦後80年となる15日に、自身の見解を示さない方向で最終調整に入ったとの報道も流れました。しかし、高橋氏はこれを「ウソ」と指摘。政治ジャーナリストの青山和弘氏も同日朝に石破首相に確認した結果、「まだあきらめていない」と明かし、新聞報道の信憑性を否定する発言をしました。
戦後80年談話の発表が注目される石破茂首相
過去の談話と石破氏のこだわり
高橋氏は、戦後談話の発表が「上書き」という形で過去に戻る行為であり、「隣国が喜ぶ」可能性があると懸念を表明しました。過去の戦後談話は、戦後50年の村山談話、60年の小泉談話が8月15日に、70年の安倍談話が8月14日にそれぞれ発表されています。高橋氏は「8月15日と(日本が降伏文書に調印した)9月2日に出せないなら、14日に出すかもしれない。なんとしても出したい」と、石破首相の強い意志を強調しました。
青山氏もまた、「石破さんは非常にこだわりが強い。ここで80年の時に自分が総理大臣なのは天命であるというような思いを持っている」と、石破首相の個人的な信念の深さに言及しました。高橋氏はこの点に触れ、閣議決定がないためいつでも発表が可能であること、有識者招集の動きが見られないことから、「お友達の有識者が誰もいないから、石破さんが勝手にしゃべる可能性がある。石破さんは人知を超えた人ですから。普通の人じゃない」と、石破首相による独断での談話発表に危惧を示しました。
専門家の懸念と他党代表の見解
ゲスト出演した日本維新の会の吉村洋文代表は、安倍総理の70年談話が「今後、戦後80年、90年、100年にわたって、平和な日本を国民の皆さんと作りあげていく」と結んでいることを挙げ、「ある意味、完結している。そこで完結させたらいい」と述べ、これ以上戦後談話を出す必要性はないとの見解を表明しました。
国民民主党の玉木雄一郎代表も同様に談話発表に否定的な姿勢を示し、「単なるお気持ち表明になる」と懸念を表明しました。玉木氏は、70年談話が半年ほどかけて有識者間で議論され練り上げられたものであることを指摘し、「石破さんの単なるお気持ち表明になっちゃうので、練られてない中で歴史認識に関わるようなことをいうべきではありません。海外に利用されるだけ」と、拙速な発表が国内外に及ぼす悪影響について警告しました。
石破首相による戦後80年談話の発表は、国内外の注目を集めながら、政界内外で複雑な思惑と議論が交錯しています。