鶴巻和哉監督が描く「ガンダム」の未来とアニメーションの深層

今や「日本の基幹産業」と称されるまでに発展したアニメーション業界において、『エヴァンゲリオン』シリーズで知られるスタジオカラーはその中核を担っています。同スタジオ所属のアニメーション監督である鶴巻和哉氏は、『新世紀エヴァンゲリオン』で副監督を務め、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』では監督として、庵野秀明総監督の右腕としてシリーズを支え続けてきました。2025年7月には、ロサンゼルスの「Anime Expo」とパリの「Japan Expo」に登壇し、海外の熱心なファンから熱烈な歓迎を受けました。しかし、鶴巻監督は同時に「あと10年も経ったら『ガンダム』シリーズも生き残れないかもしれない」と警鐘を鳴らします。ロボットアニメの未来をどのように展望しているのでしょうか。

鶴巻和哉監督の肖像写真。日本の基幹産業として成長したアニメーション業界で活躍。鶴巻和哉監督の肖像写真。日本の基幹産業として成長したアニメーション業界で活躍。

ロボットアニメに求められる「意味の更新」

鶴巻監督は1995年のテレビシリーズ『新世紀エヴァンゲリオン』で副監督を務め、その後も庵野秀明総監督のもとで『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズの監督として作品を世に送り出してきました。彼の単独監督作には2000年の「FLCL(フリクリ)」などがあり、その作風はポップで軽やか、時に吹っ切れたキャラクターが縦横無尽に躍動することで知られています。

近年、鶴巻監督は『機動戦士ガンダム』シリーズの最新作、『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)』の監督を務めました。1979年放送の『機動戦士ガンダム』に始まるシリーズを大胆に解釈した本作は、古くからのファンを巻き込んだ論争を巻き起こしつつも、「ジークアクスをきっかけに初代を見た」という若い世代の視聴者も獲得するなど、大きな反響を呼びました。

ロボットアニメの未来と「ガンダム」新プロジェクトについて語る鶴巻和哉監督。ロボットアニメの未来と「ガンダム」新プロジェクトについて語る鶴巻和哉監督。

絵を描く仕事に就きたい一心でアニメーターを目指した鶴巻監督は、当初、演出や監督といった役割は全く考えていなかったといいます。そのため、監督として求められる絵以外の要素、例えば音響、音楽、編集といった分野については「いまだに手探り状態で、よくわかっていないというのが正直なところ」だと語ります。彼は、庵野秀明総監督が脚本や絵作りだけでなく、これらの分野においても「抜群にうまい」と評価し、間近でその作業を見ていても、言語化や理論化が難しく、自身のものにできていないと率直な胸の内を明かしました。

今回、『ジークアクス』の監督を引き受けた背景には、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』制作時に「一番難しい立場で頑張っていた」という制作デスクの杉谷勇樹氏(『ジークアクス』主・プロデューサー)からの声かけがあり、その期待に応えたいという思いが大きかったと説明しています。

まとめ

鶴巻和哉監督は、『エヴァンゲリオン』シリーズでの功績に加え、『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』を通じてロボットアニメの新たな可能性を切り拓いています。自身の経験や庵野総監督との比較から、監督業の奥深さや課題に真摯に向き合う姿勢がうかがえます。彼が提起する「ガンダム」シリーズの未来への警鐘は、既存の概念にとらわれず、常に作品の「意味」を現代に即して更新し続けることの重要性を示唆しており、日本の基幹産業であるアニメーションの持続的発展に向けた重要な視点を提供しています。

参考資料

https://news.yahoo.co.jp/articles/b4fba72283ef2ee072a4f78cc54282e0c9603a2f