伊東市長の辞職撤回、深まる混乱の波紋:「公約実現」の主張と議会・市民の疑問

静岡県伊東市では、田久保真紀市長(55)による突然の辞職撤回表明がさらなる混乱を引き起こしています。市長は「公約実現のため」と続投の理由を説明していますが、その言葉に対して地元からは疑問の声が上がっています。本記事では、この異例の事態の背景と、市長の主張に対する関係各所の反応を詳報します。

田久保市長、市民の激励を理由に辞職を撤回

辞職の意向を表明しながら一転して続投を示唆した田久保伊東市長は、その理由として「多くの市民からの激励があった。『頑張ってほしい』『負けないでほしい』『最後までやり遂げろ』といった言葉が多くあった」と述べました。しかし、会見直前には、市の部長級幹部全員から続投は「考え直すべきだ」と翻意を迫られていたことが判明しています。それにもかかわらず市長はこれを受け入れず、会見で自身の2つの主要公約の実現を強く訴えました。

田久保市長は、「市民の皆様との大きな約束である新図書館建設計画の中止、そして伊豆高原メガソーラー計画の白紙撤回というその使命を全身全霊を傾けて実現してまいりたい」と強調。これらの公約こそが続投の根拠であると主張しました。

新図書館計画と伊豆高原メガソーラー計画の現状

市長が実現を掲げる「新図書館計画の中止」と「伊豆高原メガソーラー計画の白紙撤回」は、現状どうなっているのでしょうか。

まず、中止を目指す新図書館計画です。JR伊東駅から車で5分ほどの場所に建設予定地がありますが、現在は近くの図書館や公民館の駐車場として利用されています。この計画は前市長時代に持ち上がったもので、総工費42億円という巨額プロジェクトでした。しかし、近隣住民によれば、かつてホテルがあったこの土地を市が買い取ったものの、入札不調が続き、建設着工には至っていなかったといいます。田久保市長は、この計画の中止を公約に掲げて当選し、現在の図書館の改修や廃校の利用といった代替案を示し、新図書館計画を完全に白紙に戻しました。市の職員も「計画していた新図書館の建物が建つことはもうないと考えている」と番組の取材に答えています。

伊豆高原のメガソーラー計画については、市がすでに規制する条例を制定し対応済みで、2019年から工事は停止している状態です。しかし、田久保市長は「メガソーラーや新図書館計画も水面下で激しく動いている。いばらの道は承知している」と述べ、引き続き取り組みが必要であるとの認識を示しました。

市議会からの反発と市民の困惑

市長のこうした主張に対し、全会一致で辞職を求めている市議会側は困惑を隠せない状況です。伊東市の杉本一彦市議は、市長の「水面下で激しく動いている」という発言に強く反論しています。「図書館も水面下で建設に向けての動きはないし、メガソーラーも建設に向けての動きなんてない。だとすれば、辞職を撤回する理由なんてない」と述べ、市長の主張が辞職撤回の正当な理由にはならないと指摘。さらに、「陰謀論みたいな。市民に危機感をあおって、自分が(市長の座に)居座ろうとする。そういう考えでいるのではと思わざるを得ない」と、市長の真意に疑問を呈しています。

伊東市の田久保真紀市長が会見で辞職撤回と続投の意向を表明。公約実現を強調する市長の姿。伊東市の田久保真紀市長が会見で辞職撤回と続投の意向を表明。公約実現を強調する市長の姿。

伊東市の主要産業は観光業でありながら、観光客数は20年前と比べて50万人も減少するなど、地域には山積する課題を抱えています。このような状況下での市長の辞職撤回と市政の混乱は、市民生活に大きな影響を及ぼし、先行きへの不安を募らせています。

市長の「公約実現のため」という主張と、市議会や市民が抱く疑問との間で揺れ動く伊東市政。今後の動向が注目されます。


参考文献