トランプ氏、メドベージェフ氏発言で米原潜配備命令:米海軍の核抑止力とは

米国のドナルド・トランプ大統領は、ロシアのドミトリー・メドベージェフ国家安全保障会議副議長による挑発的な発言を受け、米海軍の原子力潜水艦2隻を「適切な地域」へ配備するよう命じたことを明らかにしました。この命令は、国際情勢の緊張が高まる中で、米国の核抑止力とその戦略的な柔軟性を示すものとして注目されています。トランプ氏はSNSへの投稿で、これらの「愚かで挑発的な発言」が言葉だけに終わらない場合に備えるための措置であると強調しました。

トランプ氏の指示とその背景

トランプ大統領は、今回の原子力潜水艦配備命令について、具体的な潜水艦の種類や配備先を明らかにしていません。国防総省もまた、通常、潜水艦の移動に関する詳細を公表することはほとんどありません。この情報は軍事戦略上、極めて機密性が高いとされています。

米海軍は現在、3種類の原子力潜水艦を保有していますが、そのうち核兵器を搭載し、戦略的核抑止の中核を担うのは1種類のみです。メドベージェフ副議長の発言を契機とした今回の「備え」の指示は、地政学的な駆け引きと、潜在的な脅威に対する米国の断固たる姿勢を浮き彫りにしています。

米海軍の原子力潜水艦の種類と役割

米海軍の潜水艦隊は、その秘匿性と圧倒的な火力により、米国の安全保障戦略において不可欠な存在です。主要な原子力潜水艦は、その任務に応じて大きく2つの種類に分けられます。

弾道ミサイル潜水艦(SSBN):戦略的核抑止の要

米海軍は「ブーマー」とも称されるオハイオ級弾道ミサイル原子力潜水艦(SSBN)を14隻保有しています。これらの潜水艦は、「ステルス性と核弾頭の正確な運搬を目的として特別に設計されている」と米海軍は説明しています。SSBNは、敵の先制攻撃に耐え抜く「第二撃能力」を担い、強力な核抑止力として機能します。

それぞれのオハイオ級SSBNは、複数の核弾頭を搭載可能な潜水艦発射弾道ミサイル「トライデント」を20基搭載しています。トライデントミサイルの射程は最大7400キロに達し、ロシア本土に接近することなく、大西洋、太平洋、インド洋、さらには北極海からでも攻撃することが可能です。その動向は、米海軍の中でも最も厳重に保護される秘密の一つであり、全長170メートル、潜航時の排水量約1万9000トン、乗組員159人、最高速度時速約37キロという巨大な船体が、見えない形で世界各地の海を航行しています。

米海軍オハイオ級原子力潜水艦テネシーがジョージア州キングスベイ基地へ帰還する様子。米国の核抑止力を象徴する弾道ミサイル潜水艦。米海軍オハイオ級原子力潜水艦テネシーがジョージア州キングスベイ基地へ帰還する様子。米国の核抑止力を象徴する弾道ミサイル潜水艦。

誘導ミサイル潜水艦(SSGN):多様な任務に対応

1990年代、国防総省は核抑止力の維持に必要なオハイオ級SSBNの数が減ったと判断し、そのうち4隻を誘導ミサイル原子力潜水艦(SSGN)に改修しました。SSGNは、SSBNと同じ全体的な船体仕様を維持しつつ、トライデントミサイルの代わりに巡航ミサイル「トマホーク」を搭載しています。各SSGNは最大154発のトマホークミサイルを搭載でき、その射程は約1600キロです。

さらに、SSGNは兵士の輸送能力も備えており、弾道ミサイル発射管跡に設けられた「ロック・アウト・チェンバー」から秘密裏に特殊部隊を展開することが可能です。SSGNの動向も高度に機密化されていますが、海軍は近年、軍事的な緊張が高まる地域で、その存在をあえて示すことで抑止のメッセージを送る戦略を用いることがあります。

結論

トランプ大統領による原子力潜水艦の配備命令は、国際社会における潜在的な脅威に対する米国の警戒態勢と、核抑止力の重要性を改めて浮き彫りにしました。米海軍の弾道ミサイル潜水艦(SSBN)と誘導ミサイル潜水艦(SSGN)は、その秘匿性と多様な能力によって、世界の安全保障において極めて重要な役割を担っています。これらの潜水艦の戦略的な運用は、将来の地政学的な動向に大きな影響を与えることでしょう。