日本において、お盆は家族が集まり、先祖を敬う大切な時期です。多くの方が実家への帰省を計画しますが、この恒例行事が夫婦間や家族間に微妙な感情をもたらすことも少なくありません。特に、パートナーの実家への訪問は、気を遣う場面が多く、心身の負担となるケースも指摘されています。近年注目を集めているのが、夫婦やパートナーがそれぞれ自分の実家へ帰省する「セパレート帰省」という選択肢です。AERA編集部が実施したアンケート調査では、この新しい帰省スタイルについて、興味深い本音が明らかになりました。
「セパレート帰省」賛成派が多数を占める結果に
AERA編集部が2025年7月16日から23日にインターネット上で実施した「お盆の帰省」に関する読者アンケートには、341人から回答が寄せられました。その中で、夫婦やパートナーが揃ってではなく、各自の実家へ帰る「セパレート帰省」について、回答者262人のうち「強く賛成」「やや賛成」と回答した人は合計で41.3%に上りました。一方で、「強く反対」「やや反対」としたのはわずか13.0%にとどまり、多くの人がこの帰省スタイルに肯定的であることが示されました。これは、現代社会における家族関係や個人の時間の使い方に対する意識の変化を如実に表していると言えるでしょう。
帰省を迎える側の「喜び」と「負担」
帰省してくる家族を迎える側の視点から、今回の調査では複数の本音が明らかになりました。最も多かったのは「家族の顔を見ることができて、うれしい」という意見で、全体の66.5%を占めました。これは、お盆が家族の絆を再確認し、再会を喜ぶ貴重な機会であるという伝統的な価値観が根強く存在することを示しています。
お盆の帰省、セパレート帰省について考える夫婦
しかし、その一方で現実的な負担も浮き彫りになりました。「宿泊や食事などの家事が大変だ」と答えた人は37.4%、「本当は静かに過ごしたい」が25.3%、「迎えるにあたって、お金がかかって負担だ」が24.2%と続き、家族の来訪が喜びだけでなく、準備やもてなし、経済的な負担を伴うことが明らかになりました。特に、高齢の親世代にとっては、連日の来客対応が体力的、精神的に大きな負担となる場合も少なくありません。
帰省する側の「顔を見せたい気持ち」と「現実的な考慮」
次に、実家へ帰省する側の本音を見てみましょう。最も多かったのは「帰省して家族の顔を見たい」(33.7%)、次いで「帰省して家族の顔を見せたい」(29.1%)という回答でした。これは、親や祖父母に元気な姿を見せたい、あるいは孫の成長を見せたいという気持ちが、依然として帰省の大きな動機となっていることを示しています。
しかし、帰省には現実的な側面も伴います。「交通費や時間がかかって大変」と答えた人は25.0%に上り、物理的な負担が無視できない要因であることがわかります。さらに、興味深いのは「義理の実家より、自分の実家が快適だ」という声が20.3%もあった点です。これは、義実家での生活に気を遣うストレスや、自由度の低さが帰省への障壁となっている実態を浮き彫りにしています。また、「お盆に帰省するのは当然だ」と回答した人は17.4%にとどまり、帰省が「当然の義務」ではなく、「選択肢の一つ」と捉えられている現代の風潮がうかがえます。
世代を超えた複雑な思いと「孫」の存在
セパレート帰省に「反対」と回答した60代の女性からは、帰省する側と迎える側の両方の立場を経験しているからこその複雑な心情が語られました。彼女は「夫の実家には行くと気を遣わなきゃいけないし、疲れるから行きたくない。息子家族が来ると準備後片付け、家事が大変」と、双方の負担を理解しつつも、「年に1度か2度だし、短期間だし、息子や孫の顔も見たいと思うので帰ってきて欲しいし、夫のお義母さんもそう思ってるだろうから、すべきではないと思う」と、家族とのつながりの大切さを強調しました。
別の60代女性は、「出来れば揃って帰って欲しいと思うが、負担に感じるのであれば帰らないのではなく、短期間にするなどして欲しいと思う」と、柔軟な対応を求める意見を述べました。また、「孫がいる場合は両家に夫婦家族で帰省して欲しいです。両家の祖父母の楽しみ、生きがいと思います」というコメントは、孫の存在が帰省の大きなモチベーションであり、祖父母にとっての「生きがい」であることを示しています。
多忙な現代人にとって、お盆の時期は貴重な長期休暇です。パートナーと分かれて帰省することで、帰省先で心置きなく休んだり、自身の親とより密な時間を過ごしたりできるという声もあり、セパレート帰省が個人のニーズに合わせた合理的な選択肢となりつつあることが示唆されます。
まとめ:多様化する家族の形と帰省のあり方
お盆の帰省は、家族の再会を喜び合う一方で、心身の負担や経済的な考慮も伴う、多面的な行事であることが今回のアンケート結果から浮き彫りになりました。「セパレート帰省」への賛成意見が4割を超えたことは、従来の慣習にとらわれず、家族それぞれの状況や気持ちを尊重する姿勢が広まっていることを示唆しています。
家族の形やライフスタイルが多様化する現代において、帰省のあり方もまた変化しています。大切なのは、家族間でオープンに話し合い、それぞれの本音を共有し、互いに配慮し合うことではないでしょうか。形式にとらわれすぎず、お互いが心地よく過ごせる「最適な帰省」の形を見つけることが、これからの家族関係をより豊かにしていく鍵となるでしょう。
参考文献
- AERA DIGITAL. (2025年8月4日). お盆に帰省する側、迎える側それぞれの「本音」は…。Yahoo!ニュース. https://news.yahoo.co.jp/articles/fbb9fa0a704c2ebbfc0f3c07ca7777234b7043b5