横幅45cmの枕はもう時代遅れ!快眠を妨げる枕の真実と理想の選び方

「病院に行っても不眠が治らなかった」「子どもがなかなか寝ない」といった悩みを抱える人は少なくありません。しかし、その原因が意外な「枕の横幅」にあることをご存存じでしょうか? 金沢で289年の歴史を誇る老舗ふとん店「眠りにまっすぐ乙丸屋」の12代目店主が、2万人を救った快眠メソッドを初公開した著書『とにかくぐっすり眠りたい 老舗ふとん店の12代目がこっそり教える快眠法60』から、特に重要な「枕の横幅」に焦点を当て、ぐっすり眠るための寝具選びの真実を徹底解説します。睡眠専門医も納得の科学的根拠に基づいたアドバイスで、あなたの睡眠の質を劇的に向上させましょう。

ぐっすり眠るための適切な枕の選び方と快眠を実現する寝具ぐっすり眠るための適切な枕の選び方と快眠を実現する寝具

現代の快眠を阻む「狭すぎる枕」の落とし穴

多くの人が見落としがちなのが、枕の「横幅」です。歴史を振り返ると、私たちの祖先が使っていた枕には、現代の快眠を妨げる共通の欠陥がありました。

江戸時代の「殿様枕」に潜む二重の欠陥

江戸時代の「殿様枕」は、一見すると豪華に見えるかもしれませんが、実は致命的な欠陥を二つ抱えていました。一つは、その「高すぎる」という問題。そしてもう一つが、まさに本稿のテーマである「横幅が狭すぎる」という点です。当時は、枕の高さや横幅が睡眠に与える影響について、現代のような知見がありませんでした。

昭和の定番「そば殻枕」も抱えていた問題

殿様枕だけではなく、昭和の時代に広く使われていた「そば殻枕」にも同じ問題がありました。そば殻は適度な硬さと通気性に優れており、リサイクル素材としても優秀でしたが、その大半は殿様枕と変わらない“狭い横幅”でつくられていたのです。これは、当時の枕に対する一般的な認識が、現代の快眠理論とは大きく異なっていたことを示唆しています。

かつて枕は「3基セット」で売られていた驚きの事実

さらに驚くべきことに、昭和の中頃まで、寝具店によってはそば殻枕を「3基セット」で販売していたという話が残っています。これは、個人の体型や体格に合わせて枕を選ぶという発想が皆無であった時代の名残です。枕自体も小ぶりだったため、家族分をまとめて安価に購入したいというニーズに応える形での販売でした。しかし、この「まとめて販売」という習慣自体が、一人ひとりの最適な睡眠環境を軽視していたことの表れとも言えるでしょう。

枕の横幅が快眠に与える深刻な影響

では、枕の横幅が狭いことが、私たちの睡眠に具体的にどのような悪影響を及ぼすのでしょうか。

寝返りを妨げる「狭い枕」の弊害

横幅が狭い枕の最大の問題点は、就寝中の「寝返り」を妨げてしまうことです。枕から頭が落ちるのを無意識に避けるため、人は頭の位置をできるだけ変えずに首だけを捻って寝返りを打とうとします。しかし、これでは十分に体勢を変えられず、結果として睡眠の質が低下してしまいます。

なぜ寝返りが重要なのか?

寝返りは、単に寝相を変えるだけでなく、睡眠中に体が受ける圧力を分散させ、血行を促進し、体温調節を助ける重要な役割を担っています。適切な寝返りが打てないと、特定の部位に負担が集中し、体の歪みや肩こり、腰痛の原因となることがあります。また、深い睡眠(ノンレム睡眠)と浅い睡眠(レム睡眠)のサイクルをスムーズに移行するためにも、自然な寝返りは不可欠です。

首への過度なストレスとそのリスク

狭い枕で無理に寝返りを打とうとすると、首に不自然なストレスがかかります。これは、首の筋肉の緊張や、頸椎(けいつい)への負担となり、長期的に見れば、慢性的な首の痛みや肩こり、さらには頭痛や自律神経の乱れといった、より深刻な健康問題につながるリスクもはらんでいます。快適な睡眠は、首への負担が少ない正しい寝姿勢から生まれるのです。

理想の枕は「頭3つ分」!最適な横幅と選び方のポイント

それでは、ぐっすり眠るために理想的な枕の横幅とは、一体どのくらいなのでしょうか。そして、どのように選べばよいのでしょうか。

快眠を誘う枕の黄金比:理想の横幅は60〜65cm

枕の理想的な横幅は、驚くかもしれませんが「その人の頭3個分」が目安とされています。個人の頭の大きさには差がありますが、おおよそ60cmから65cmがこの基準に当てはまります。一般的にソファーなどに置くクッションのサイズは45cm×45cmの正方形が多いですが、もしあなたの枕がそれと同じくらいの横幅しかないとしたら、残念ながらそれは「小さすぎる枕」と言えるでしょう。十分な横幅は、質の高い睡眠への第一歩です。

乙丸屋が提案する「快眠」のための枕2タイプ

「眠りにまっすぐ乙丸屋」が実際に取り扱っている枕は、「横幅63cm×奥行き43cm」と「横幅70cm×奥行き50cm」の2タイプのみです。これらのサイズは、前述の「頭3個分」の基準を満たしており、中央に頭を置いて寝た際、肩を支点として大きく寝返りを打っても、頭が枕から落ちて寝姿勢が乱れる心配がありません。これは、長年の経験と科学的根拠に基づいて導き出された、快眠のための最適な選択肢と言えるでしょう。

枕選びの最終チェックポイント:高さと横幅

枕を選ぶ際、多くの人が「高さ」ばかりに注目しがちですが、「横幅」も非常に重要な要素です。枕の高さは、詰め物の増減やタオルの重ね方などで、ある程度は後から調整することが可能です。しかし、一度購入した枕の横幅を広げることは不可能です。そのため、枕を購入する際は、高さだけでなく、必ずその横幅が自身の頭3個分、つまり60cm〜65cmの範囲にあるかを確認するようにしましょう。快眠への投資は、まず正しい枕選びから始まります。

結論

ぐっすり眠れないという悩みの背景には、意外なほど見落とされがちな「枕の横幅」が潜んでいることが明らかになりました。江戸時代や昭和の枕の常識が、現代の睡眠科学から見れば不十分であったように、横幅が狭い枕は寝返りを妨げ、首に過度な負担をかけることで、睡眠の質を著しく低下させます。

理想的な枕の横幅は「頭3つ分」、具体的には60cmから65cmが目安です。この基準を満たす枕を選ぶことで、自然な寝返りが促され、首や体への負担が軽減され、結果として深い快眠へと繋がります。

寝具、特に枕は日々の健康を支える重要な要素です。もしあなたが現在、ぐっすり眠れないと感じているなら、まずはご自身の枕の横幅を確認し、最適なサイズへの見直しを検討してみてはいかがでしょうか。適切な枕を選ぶことが、充実した毎日を送るための第一歩となるでしょう。

参考資料

  • 乙丸屋 久兵衛 著『とにかくぐっすり眠りたい 老舗ふとん店の12代目がこっそり教える快眠法60』ダイヤモンド社 (医学監修:森川恵一 日本睡眠学会総合専門医)