南米原産の強い毒を持つ「ヒアリ」が日本で定着する恐れが高まっている。東京都江東区の青海(あおみ)ふ頭で多くの女王アリを含む巣が発見されているためだ。女王アリが巣立つなどしていれば、拡散を食い止めるのは非常に難しくなるといい、専門家は早期の対策強化を訴えている。青海ふ頭は、東京五輪・パラリンピック会場からも近く、環境省などは埠頭周辺での調査を進めるとともに、来年3月まで殺虫剤の散布を続ける。(橋本昌宗)
青海ふ頭では今年10月、コンテナヤードで舗装の継ぎ目の土の中から巣が見つかり、50匹以上の女王アリや800匹以上の働きアリや卵までが確認された。11月29日にも同じ埠頭内のコンテナヤードで、女王アリこそいなかったものの新たに500匹以上が見つかった。
ヒアリの発見例は、国内では平成29年に兵庫県尼崎市で初めて確認され以来、15都道府県で48件あるが、多数の女王アリを含むケースはなかった。
女王アリは寿命が尽きる6~7年の間に25万個もの卵を産むなど非常に繁殖力が強い。育った女王アリが巣立ち、別の場所で新しい巣を作り、世代交代のサイクルが繰り返されると数が爆発的に増える。
ヒアリは、他の巣で育った別系統の雄アリがいなければ交配・繁殖はできないが、10月に見つかった巣からは女王アリがすでに巣立って交配・繁殖した危険性も否定できず、九州大の村上貴弘准教授(保全生態学)は「定着の危険性のフェーズが1段階上がった」とする。「これまでとは次元の異なる事態」。菅義偉官房長官も関係閣僚会議でこう訴え対策を指示した。