政府備蓄米、出荷遅延でキャンセル相次ぐ:9000トン超に影響

随意契約による政府備蓄米を巡り、事業者からのキャンセルや申し込み数量の削減が相次いでいることが判明しました。8月1日時点で、既に20の事業者が申し込みを取り下げたり数量を減らしたりしており、その総量は約9000トンに上ります。この事態の背景には、備蓄米の出荷遅延が大きく影響しているとみられています。

政府備蓄米の袋が積まれた倉庫または店舗の様子。出荷遅延により随意契約のキャンセルが相次いでいる現状を象徴政府備蓄米の袋が積まれた倉庫または店舗の様子。出荷遅延により随意契約のキャンセルが相次いでいる現状を象徴

随意契約キャンセルと数量変更の現状

農林水産省が6月11日に受け付けを開始した2021年産12万トンの備蓄米枠において、キャンセルが確認されています。公開されている申し込み確定状況リストを詳細に分析した結果、名前がリストから消えた事業者や数量変更を行った事業者が複数存在します。

具体的には、大手・中小の小売業者、米穀店、中食・給食業者など合計13事業者が申し込みを完全に取り下げ、さらに7事業者が申し込み数量を減らしました。大手小売りのトライアルカンパニーは、申し込み数量を6000トン削減しています。同社の持ち株会社トライアルホールディングスは、数量変更の理由について「販売できるエリアで、販売できる量をお客さまに届けている」と述べるに留まり、詳細な説明は避けました。

また、申し込み数量の約3分の2をキャンセルしたあるコンビニエンスストアは、国から「8月20日の引き取り期限に間に合わない」との連絡があったことを理由に挙げています。農林水産省の貿易業務課も、リストは更新されていないものの、実際には9000トンを上回るキャンセルが発生している可能性が高いと認めています。

現場の声と食糧政策審議会での懸念

今年6月初旬に政府備蓄米を申し込んだある米穀店からは、切実な声が聞かれます。同店は6月から8月の3カ月間で販売する前提で数十トンを申し込んだものの、7月末の時点でわずか10トンしか届いていない状況です。「残り1カ月間で申し込んだ量を売るのは無理だ。一部キャンセルするしかない」と、流通の滞りによる経営への影響を訴えています。

この問題は、7月30日に農林水産省で開催された食料・農業・農村政策審議会食糧部会でも取り上げられました。委員からは「6月初旬に申し込んだ備蓄米が、2カ月たっても手元に届いていないという小売りの声が多数届いている」との報告がありました。別の委員からは、「随意契約による備蓄米は当初非常に迅速に流通したが、その状態が持続していない」との指摘があり、流通体制の課題が浮き彫りになっています。

まとめ

政府備蓄米の随意契約における相次ぐキャンセルは、出荷遅延が主因であり、小売業者や飲食関連事業者など広範な流通チャネルに影響を及ぼしています。約9000トンに及ぶキャンセルは、政府の備蓄米放出政策の有効性や、その後の流通管理体制に課題があることを示唆しています。食料安全保障の観点からも、この遅延問題とそれに伴うキャンセル状況は、今後の政府の対応が注目される重要な課題となっています。

参考情報:

  • 日本農業新聞 (情報元)