イギリス人登山客、ドロミテ山岳救助に240万円請求 – 警告無視の代償とアルプス遭難の危機

イタリアのドロミテ山塊で先月31日、警告標識を無視して閉鎖された登山ルートに進入した60歳のイギリス人男性が、その後のヘリコプターによる救助活動に対し、約240万円(1万4225ユーロ)の費用を請求されました。国家山岳救助隊(CNSAS)によると、この費用は2機の救助ヘリコプターと十数名の専門救助隊員および支援スタッフの使用料に充てられるとのことです。今回の事例は、山岳地帯における警告無視の危険性と、それに伴う個人の責任を浮き彫りにしています。

史上最悪の登山シーズン:イタリア・アルプスでの遭難増加

CNSASの発表によると、今年の夏はイタリアのアルプス山脈とドロミテ山塊にとって、今世紀で最も危険な登山シーズンとなっています。6月21日から7月23日のわずか1ヶ月ほどの間に、山歩き中の遭難により80人以上が死亡し、さらに5人が現在も行方不明となっています。救助要請の件数も昨年と比較して20%増加しており、コルティナやサン・ビート・ディ・カドーレ周辺の特に危険なルートの一部は閉鎖を余儀なくされています。

警告を無視した登山客の救助詳細と高額請求の理由

救助されたイギリス人ハイカーは、これらの閉鎖地域内で救助を要請しました。彼は上から岩が落ちてきたと訴えましたが、正確な座標を伝える機器を持っていませんでした。救助チームが男性を特定した場所は、標高2400メートルの土砂崩れ中心部という極めて危険な地点でした。

CNSASはフェイスブックで、今回の救助活動が必要となったのは、ハイカーが既存の標識を無視したためであると強調しています。「不注意かリスクの過小評価のため、標識は人々の通行を止めるには不十分だったことが明らかになった」と述べ、英語、イタリア語、ドイツ語で「閉鎖」と明記された標識の画像を公開しました。男性は少なくとも四つの警告標識を通過し、張られた柵をくぐり抜けて侵入しており、付近にいた他のハイカーからの引き返すよう促す声も無視していたことが判明しています。

ドロミテ山塊で登山道閉鎖を示す標識ドロミテ山塊で登山道閉鎖を示す標識

この救助活動を受け、CNSASとイタリアの市民保護当局は、今後さらに登山道の閉鎖を増やすことを決定しました。これは、警告の遵守がいかに重要であるかを登山者に強く促すための措置です。

異常気象が引き起こすアルプスの危険な状況

今年の欧州アルプス全域における危険な状況は、異常気象が主な原因とされています。予期せぬ激しい嵐が頻発し、地滑りや鉄砲水、時には真夏にもかかわらず吹雪のような状況が発生しています。最近救助された人々の中には、低体温症のため入院を余儀なくされたケースも複数報告されており、気象条件の予測不能性が山岳活動のリスクを高めています。

登山者への呼びかけ:事前の準備と警告の遵守

地元当局は、ドロミテ山塊やアルプス地域への登山を計画している訪問者に対し、事前の準備を怠らないよう強く呼びかけています。最新の気象情報の確認、適切な装備の携行、そして何よりも設定された警告標識や閉鎖区域の厳守が、自身の安全と救助隊への負担を減らす上で不可欠です。山岳地域での活動においては、常に自己責任と危険回避の意識を持つことが求められます。

参考文献

  • CNN