韓国「ノーキッズゾーン」の現実:親の7割が利用前に確認、社会の意識を反映

【KOREA WAVE】韓国において、公共の場での子どもと保護者に対する社会の認識と、それにより生じる親の葛藤が浮き彫りになっています。直近の調査では、韓国人の10人に7人以上が、公共の場で保護者が子どもを制御できない場合、「常識がない」と見なす傾向があることが判明しました。さらに、子連れの親の約7割が、飲食店やカフェなどの公共施設を利用する前に「ノーキッズゾーン」(子ども立入禁止区域)を事前に確認している実態も明らかになっています。

2022年、韓国で「ノーキッズゾーン反対」と書かれたメッセージを塗る子どもたち。社会的排除への意識を示す象徴的な光景。2022年、韓国で「ノーキッズゾーン反対」と書かれたメッセージを塗る子どもたち。社会的排除への意識を示す象徴的な光景。

国民の「常識」意識と子どもの受容度

この報告は、8月3日に育児政策研究所が発刊した「育児政策フォーラム」に掲載された「公共の場における子どもへの社会的排除の実態と対応課題」と題された調査に基づいています。調査は国民1200人、さらに小学生以下の子どもを持つ保護者446人を対象に実施されました。

調査結果によると、回答者の74.8%が「韓国社会の認識として、公共の場で養育者が子どもを制御できなければ常識がないと見なされる」と考えていることが分かりました。これに対し、自身もそう思うと答えたのは62.6%でした。また、韓国社会が「公共の場に子どもがいると不快に感じる」と回答者の33.7%が認識している一方で、自身が不快に感じると答えたのは10.3%に留まりました。これは、個人の感情よりも韓国社会の雰囲気をより否定的に捉えていることを示唆しています。一方で、乳幼児が大声で泣き出したり、すぐに泣き止まなかったりする状況については、国民の94.5%が受け入れられると答えています。

子連れ外出時の不快経験:場所別詳細

過去1年以内に公共の場で幼い子どもに起因する不快な経験をしたと答えた人の割合は、飲食店が50.5%と最も多く、次いでカフェが24.3%、マート(スーパーマーケット)が23.9%、公共交通機関が22.9%、映画館が15.6%の順でした。

親が抱える葛藤と「ノーキッズゾーン」確認の実態

小学生以下の子どもを持つ保護者の40.6%は、公共の場で子どもの特性や気質によって制御がうまくいかない場合があると回答しています。さらに、30.3%の保護者は、育児による抑うつ感やストレスのために公共の場で子どもを適切に制御するのが困難な場合があると述べています。

直近1年間に、カフェで子どもを同伴したことで不快な経験をした保護者は30.5%、飲食店では30.0%に上りました。また、飲食店などで出入りや利用が制限されることへの懸念、あるいは子ども連れで不快な思いをするのではとの不安から訪問を断念した経験がある保護者は34.1%でした。これに続くのはカフェ(32.1%)、映画館(23.3%)、図書館(19.3%)、公共交通機関(16.4%)でした。

特に注目すべきは、「ノーキッズゾーン」の確認習慣です。保護者の47.1%は場所に応じて、23.1%は公共の場を利用するたびにほとんど確認していると回答し、合わせて70.2%の保護者が事前に利用可否や制約を確認していることが判明しました。「確認しない」と答えたのはわずか29.8%でした。

また、保護者の64.3%が「子どもと公共の場にいるとき周囲の目が気になる」と答え、40.8%は「公共の場で子どもが駄々をこねたり走り回ったりするのを懸念して外出を控えたことがある」と述べています。「社会的配慮を受けられなかった経験」は24.0%、「子どもと一緒にいたことを理由に無視または蔑視された経験」は17.5%にのぼりました。

結論

今回の調査結果は、韓国社会において、子連れの家族が公共の場で直面する厳しい現実と、社会的な配慮の必要性を強く示唆しています。保護者は自身の行動に対する社会の厳しい目にさらされ、その結果として外出を控えたり、事前に「ノーキッズゾーン」を確認するといった負担を抱えています。子育て世帯が安心して社会に参加できる環境を整備するためには、社会全体の意識変革と共存に向けた具体的な政策的アプローチが求められるでしょう。

参考資料