現在、日本企業の女性活躍は明確な転換点にあります。ESGデータ分析の専門家集団であるサステナブル・ラボは、その潮流を指摘しています。Forbes JAPAN「WOMEN AWARD」のランキング設計を2年連続で手掛けた同社のCEO平瀬錬司氏とESGリサーチマネージャーのジャッキー・ヤン氏が、日本の女性活躍推進の現状と未来を読み解きます。かつて「理念」として語られることが多かったダイバーシティが、今や企業の「生産性向上ドライバー」として経営戦略に組み込まれる時代へと移行しているのです。
ダイバーシティを経営戦略として評価するWOMEN AWARD
「WOMEN AWARD」企業ランキングは、非財務データと財務データの統合評価によって決定されます。サステナブル・ラボは、ビッグデータと統計的手法を駆使して全1,665社を分析し、ランキングを設計しました。本アワードの根底には「女性活躍は企業の競争力に直結する」という基本理念があり、ダイバーシティ推進を単なる社会貢献ではなく「経営戦略の一部」として評価しています。評価軸は、1. ダイバーシティ(登用・比率・文化)、2. 人的資本開発(育成・教育・リーダー育成)、3. 労働環境(柔軟な働き方・制度整備)、4. 財務パフォーマンス・生産性(成果との接続)の4カテゴリで構成され、これらを総合スコア化して評価されます。
調査対象は東証プライム市場上場企業に加え、本アワード応募企業(非上場がメイン)も含まれています。このため、情報開示量や企業規模による偏りを最小化し、上場・非上場を問わず公平な比較を可能にする指標群が設定されました。指標ごとの重みを調整することで、どちらかが有利になりすぎないようバランスが取られています。
評価基準の進化:実効性と成果への重点
今年のランキング設計では、昨年までの「在宅勤務の有無」といったコロナ禍特有の一時的指標を削除しました。代わりに、経営トップの発言や統合報告書における「女性関連言及」をAIで抽出し、新たな評価項目として加えています。さらに、女性活躍を非財務の文脈に留めることなく、生産性、業績、企業価値との関連性を重視する設計へと刷新されました。具体的には、上記のカテゴリ2(人的資本開発)と4(財務パフォーマンス・生産性)の両立を示す企業が高く評価され、カテゴリ4が一定水準に満たない企業は上位に進出できない仕組みとなっています。加えて、直近6ヶ月間に重大な不祥事が発生していた企業には減点ペナルティが科せられるなど、より実効性と成果を重視する姿勢が明確に示されています。
ビジネスウーマンの活躍を示すイメージ
日本企業の女性活躍における転換期
今回の調査結果を俯瞰すると、日本企業における女性活躍推進が「制度導入」段階から「成果創出」段階へと移行しつつある、明確な転換期を迎えていることがわかります。2016年の女性活躍推進法の施行以降、女性管理職比率は着実に上昇し、男性育休や多様なキャリア支援制度の拡大が進みました。これにより、女性の働きづらさの改善が進み、ダイバーシティ推進の主役は多様なジェンダーや属性へと広がり、今や「組織全体の包摂性」を評価する仕組みへと進化を遂げています。今回のランキングでも、ダイバーシティを単なる「理念」としてではなく、「生産性向上の真のドライバー」として捉え、具体的な成果を出している企業が上位に名を連ねる結果となりました。これは、日本企業が持続可能な成長のために女性活躍を経営の核と捉え始めた証と言えるでしょう。





