小泉進次郎農林水産大臣が推進する政府備蓄米の放出政策において、予期せぬ「誤算」が生じています。精米能力や物流の制約が原因で、約9000トンを超える備蓄米の契約キャンセルが判明しました。この事態は、市場における米の価格変動と相まって混乱を招いており、今後の食料政策に大きな課題を提起しています。
精米・輸送能力の壁:「さばけず」大量の契約キャンセル
小泉農水大臣は、「一部キャンセルの声もあることは聞いている。(販売期限を)延長してもらいたいという声は、かなり前の段階からコンビニを含めて大手からも出ている一方で、中小のスーパーからは異なる声も聞かれる」と述べ、幅広い関係者からのヒアリングを開始したことを明らかにしました。農林水産省は先月15日の時点で、「現状は8月末までに売り切っていただくことに変更の考えはなく、まずは全力で売り切りに取り組んでいきたい」と強調していました。しかし、現場では精米能力の限界や物流の制約から出荷の「目詰まり」が発生。これにより、販売業者の一部から「出荷が遅れて売り切れるか分からない」との声が上がり、最終的に約9000トンに上る契約キャンセルが判明しました。
政府の備蓄米放出政策で、精米や輸送の遅れにより契約キャンセルが生じ、市場への流通が滞る備蓄米が積み上げられている様子。
都内で米店「スズノブ」を営む西島豊造代表取締役は、この状況について別の不安を口にします。店に届いたのは、江藤拓前農水大臣時代に高値で入札された備蓄米で、すでに随意契約による安価な備蓄米が市場に出回っていた先月下旬のことでした。西島代表は、「精米してしまうと味が落ちるため、オーダーが来てから精米する。そのため店頭には精米を置いていない」と説明。店頭で5キロ3480円で販売していますが、ほとんど売れていないといいます。
高値で仕入れた備蓄米の行方:「返したい」小売店の苦悩
さらに状況は追い打ちをかけています。西島代表は「これからお盆で、産地から米を持って帰省する人も多く、米が一番売れない時期だ」と指摘。店内に積み上げられた高値で仕入れた備蓄米を前に、「もう売れないと分かっているので、そりゃ返したいですよ。用済みのコメになってしまった。また政府が買い戻しをしてくれるのか、どうしていいか全く分からない」と、その苦しい胸の内を明かしました。
一方で、6月から値下がりが続いていたスーパーでの米の平均価格は、10週ぶりに前週を上回り、5キロあたり3625円と40円の値上がりとなりました。西島代表は、「備蓄米の放出である程度、市場価格を下げたりするきっかけにはなったが、今ここに来て(入札備蓄米を)どうしようかという体制は止まってしまっている」と語り、早急な対策を求めています。
政府備蓄米の放出は、市場への安定供給と価格抑制を目的としましたが、精米・輸送能力の限界や市場の読みの甘さから、約9000トンもの契約キャンセルと小売店の困窮を招きました。小泉農水大臣は対応を検討中ですが、高値で仕入れた備蓄米の行方を含め、迅速かつ具体的な解決策が求められます。本件は、今後の政府の食料政策において、市場動向へのより深い理解と綿密な計画の重要性を浮き彫りにしています。
情報源: テレビ朝日「グッド!モーニング」2025年8月5日放送分より