昨年10月20日、茨城県庁の飯塚博之副知事(62)の秘書を務めていた桜木拓也さん(仮名、享年41)が自ら命を絶った。この痛ましい出来事から一年近くが経ち、遺族であるAさんとBさんが重い口を開いた。「昨年の誕生日、LINEを送ったら〈上が最悪だから辞めたい〉と返信が来たんです。それまで仕事の愚痴なんて聞いたことがなかったのに、あの副知事の下で働くようになってから、弱音を吐くようになった」。彼らの言葉は、桜木さんが直面していた想像を絶する苦悩を物語っている。桜木さんは亡くなるわずか5日前、飯塚副知事からの執拗なパワーハラスメントに苦しんでいたことを詳細に記した遺書を残していた。この遺書は、県政の深部に潜む問題を浮き彫りにし、大井川知事の任命責任をも問う事態に発展している。
桜木さんの苦悩と「副知事を呪う」遺書の衝撃
桜木拓也さんは、地方公務員として長年にわたり真面目に職務に励んできた人物だった。遺族が語るように、彼は仕事の愚痴をこぼすことはめったになく、周囲からは信頼厚い職員として知られていた。しかし、飯塚副知事の秘書となって以降、その様子は一変したという。精神的な疲弊は隠しきれなくなり、友人や家族へのLINEでの弱音は、彼が極度のストレス下に置かれていたことを示唆していた。
桜木拓也さんの遺書の一部が示す生前の苦悩とパワハラ被害の実態
彼が残した遺書には、飯塚副知事から受けた具体的なパワハラの状況が生々しく綴られていた。内容は多岐にわたり、人格否定、些細なミスに対する執拗な叱責、業務範囲を超えた無理な要求、そして同僚の前での公開処刑にも等しい言動などが記されていたという。特に衝撃的だったのは、「副知事を呪う」という言葉が遺書の中に残されていたことだ。これは、桜木さんが死を選ぶほどの精神的苦痛の中で、その原因となった人物への強い憎悪と絶望を抱えていたことを示している。遺族は、遺書に綴られた内容が桜木さんの苦悩のすべてを物語っていると証言し、その悲痛な叫びを世に問うている。
飯塚副知事のパワハラの実態と県庁内の反応
飯塚副知事によるパワハラの疑惑は、桜木さんの遺書だけにとどまらない。県庁内部の関係者からも、飯塚氏の厳しい言動や、部下への高圧的な態度に関する証言が複数寄せられている。ある県職員は、「飯塚副知事は非常に厳しく、周囲に気を遣わせるタイプだった。彼の秘書になることは、職員の間では『茨の道』と認識されていた」と匿名で語った。また、別の職員からは、飯塚氏が感情的に部下を罵倒する場面を目撃したという証言も聞かれた。これらの証言は、桜木さんが単独で特別な扱いを受けていたのではなく、飯塚氏の言動が日頃から問題視されていた可能性を示唆している。
桜木さんの自死後、茨城県庁は内部調査を開始したとされるが、その透明性や実効性には疑問の声も上がっている。県側は「調査中であり、詳細についてはコメントを差し控える」との姿勢を崩していないが、遺族は第三者による公正な調査を求めている。この事件は、単なる個人の問題として片付けられるべきではなく、県庁という公的機関における職場環境の健全性、そしてハラスメント対策の不徹底という、より根深い問題を示唆している。
大井川知事の任命責任と今後の課題
この事件は、飯塚副知事を任命した大井川知事の責任問題にも発展している。知事には、幹部職員の選任にあたり、その人物の能力だけでなく、人格や倫理観、部下を指導・育成する資質までを見極める責任がある。しかし、今回のパワハラ疑惑が事実であれば、その任命責任が厳しく問われることになるだろう。
茨城県政の闇:職員自死問題の背景に潜むパワハラと組織の責任
大井川知事はこれまでのところ、この問題に対し公に明確な見解を示していない。知事としてのリーダーシップと説明責任が求められる中、事件の真相究明と再発防止に向けた具体的な行動が強く期待されている。県政の信頼を揺るがすこの事態に、県民の目は厳しい。
飯塚博之副知事:茨城県庁職員の自死問題でパワハラ疑惑の渦中に
公務員の職場におけるハラスメント問題は、近年、社会的な注目を集めている。組織のトップが部下の人権を尊重し、健全な職場環境を構築する意識がなければ、同様の悲劇は繰り返される可能性がある。今回の桜木さんのケースは、茨城県庁だけでなく、全国の公的機関における職場環境を見直す契機となるべきだ。遺族の痛みを癒し、再発防止策を徹底するためには、徹底した事実究明と、関与した人物への適切な対応が不可欠である。
結論
茨城県庁で発生した職員の自死事件は、単なる悲劇として終わらせてはならない。桜木拓也さんが残した「副知事を呪う」という痛ましい遺書は、職場におけるパワーハラスメントの深刻さと、それが個人の命を奪うまでに追い詰める現実を浮き彫りにしている。飯塚副知事へのパワハラ疑惑は、県庁内部の組織風土、そして大井川知事の任命責任という、より広範な問題へと波及している。
この事件の真相を徹底的に究明し、二度とこのような悲劇が起きないよう、県庁全体で職場環境の改善とハラスメント対策の強化を図る必要がある。遺族の訴えに真摯に耳を傾け、公平かつ透明性のある調査を行い、その結果に基づいて責任の所在を明確にすることが、失われた信頼を回復するための第一歩となるだろう。公務員が安心して働ける環境を整備することは、県民へのより良い行政サービスの提供にも繋がる重要な課題である。
参考文献
- 文春オンライン:茨城 大井川県政の闇 自死職員遺族が告白「副知事を呪う遺書」【先出し全文】