米中首脳会談の可能性:ルビオ国務長官の発言とアジア外交の行方

2025年7月11日付のワシントン・ポスト紙が報じたところによると、東南アジア諸国連合(ASEAN)外相会合における米中外相会談後、ルビオ国務長官は本年中に米中首脳会談が行われる可能性が高いとの見方を示しました。この会談は非常に建設的だったと述べ、両国が首脳会談を望んでおり、いずれ実施されるだろうとの期待を表明しました。この発言は、通常は対中強硬派とされるルビオ国務長官としては異例の前向きなものであり、政権内で対話の好機という考えが主流になっていることを示唆しています。

ルビオ国務長官の姿勢転換と米中対話の進展

ルビオ国務長官は、かつて指名公聴会で中国を「米国の史上最大の競争相手」と位置づけるなど、強硬な姿勢で知られていました。しかし、今回の発言は、対立よりも対話を重視する姿勢への転換を示しています。トランプ大統領自身も、貿易戦争の最中であっても習近平国家主席を「友人」と呼び、取引への希望を繰り返し表明してきました。ルビオ国務長官も、貿易や台湾問題といった具体的な対立点に焦点を当てることなく、「大国間には常に意見が異なる問題が存在する」と述べ、対立を前提とした上での対話の必要性を強調しました。

ルビオ国務長官と王毅外相の会談、または米中外交関係を象徴するイメージルビオ国務長官と王毅外相の会談、または米中外交関係を象徴するイメージ

ASEAN外相会議での米中会談の背景と内容

今回の米中外相会談は、ASEAN外相会合の機会に行われました。この会合は、米国と中国がASEAN諸国の支持を巡り、影響力競争を繰り広げる場でもあります。ルビオ国務長官と中国の王毅外相は約1時間にわたり会談し、前日にはルビオ国務長官がウクライナ戦争における中国の対ロシア支援について議論したいと述べていました。ルビオ国務長官は、ロシアのラブロフ外相との会談後、中国が可能な限りロシアを支援する考えであると述べ、翌日には両者で再度短時間の会談が行われました。対中強硬派として知られ、2020年以降中国のブラックリストに載っているルビオ国務長官は、国務長官就任直後の1月にも王毅外相と電話会談を行っていました。

複雑化するアジア訪問:新たな関税と外交日程の影響

今回のルビオ国務長官の国務長官として初のアジア訪問は、トランプ大統領がアジア諸国に対し、米国の要求に応じない限り関税を導入すると脅した直後に行われたため、その意味合いは複雑なものとなりました。中東や欧州での紛争も重なり、ルビオ国務長官のアジア訪問は、各国での滞在が数時間に短縮される結果となりました。ASEAN外相に対する発言で、ルビオ国務長官は「米国はアジア諸国との強力な協働に関心があり、これから50年の歴史のほとんどはこの地域で作られる」と強調しました。当初予定されていた日本と韓国への歴訪は、ワシントンでのネタニヤフ首相との会談に同席するため中止され、代わりに日韓外相とはASEAN会合の機会に会談が行われました。米国代表団のこの地域への到着は、トランプ大統領の関税政策が、中国を孤立化させるためのこれまでの努力に反する可能性があるという懸念を伴うものでした。

結び

今回のルビオ国務長官の発言とASEAN外相会合での一連の動きは、米中間の対立が続く中でも、両国が首脳レベルでの対話の機会を模索している現状を浮き彫りにしています。特にアジア地域においては、米国の外交が新たな関税政策や他地域の紛争に影響を受けつつも、その協力関係の強化を目指す複雑な状況にあることが示されました。今後の米中関係、そしてそれがアジア地域の安定にどう影響するかは、引き続き注視すべき重要な焦点となるでしょう。


参考文献