竹内英明元県議の妻、立花孝志NHK党首を名誉毀損で刑事告訴:兵庫知事選巡る波紋

今年1月、惜しまれつつこの世を去った元兵庫県議会議員の竹内英明氏の妻が、8月8日に記者会見を開き、NHK党の立花孝志党首を名誉毀損の容疑で刑事告訴したことを公表しました。この告訴状は6月に兵庫県警へ提出され、すでに受理されているとのことです。故・竹内氏の妻は、「昨年の兵庫県知事選挙において、夫が立花氏から『黒幕』と名指しされて以来、夫の運命は大きく変わってしまいました」と、当時の状況を振り返り、深い悲しみを滲ませながら訴えました。この刑事告訴は、兵庫県政界に大きな波紋を広げた一連の誹謗中傷問題に、新たな局面をもたらすものです。

今年1月に亡くなった元兵庫県議会議員、竹内英明氏の遺影。妻は立花孝志NHK党首を名誉毀損で刑事告訴しました。今年1月に亡くなった元兵庫県議会議員、竹内英明氏の遺影。妻は立花孝志NHK党首を名誉毀損で刑事告訴しました。

兵庫知事選を巡る誹謗中傷の始まり

事の発端は、昨年3月に兵庫県の斎藤元彦知事に対するパワハラ疑惑などが、県の元幹部によって内部告発されたことに遡ります。当時、兵庫県議会の百条委員会の一員であった竹内氏は、この疑惑の真相解明に積極的に取り組み、斎藤知事の不正を鋭く追及しました。その結果、県議会は9月に全会一致で斎藤氏に対する不信任決議を可決し、斎藤氏は知事を辞職することとなりました。

これに伴い、兵庫県知事の出直し選挙が行われることになり、辞職した斎藤氏を含め7名が立候補しました。この中には、自身の当選ではなく、斎藤氏を支援する目的で立候補したNHK党の立花孝志氏も含まれていました。選挙戦の街頭演説において、立花氏は内部告発について明確な根拠を示すことなく、「竹内議員は斎藤知事のありもしない噂話をつくった」「竹内が黒幕だ」などと主張し始めました。

立花氏の発言後、竹内氏の事務所には、竹内氏を非難する郵便物、メール、そして電話が殺到するようになりました。さらに、SNS上でも竹内氏に対する誹謗中傷がエスカレートし、その攻撃は執拗に続けられました。当時、事務所で業務にあたっていた竹内氏の妻は、「変な電話やメールがたくさん来るようになり、周囲をうろつく人もいて、本当に怖かった」と、当時の精神的な苦痛を明かしました。

止まない嫌がらせと竹内氏の議員辞職

昨年11月17日、斎藤氏が再選を果たすと、竹内氏はその翌日の11月18日に議員辞職を表明しました。この際、竹内氏は記者たちに対し、「不慮のことが起こるかもしれない。危険です。今できるのは家族を守るために県議を辞めるしかない」と、言葉少なに語り、自身の身と家族の安全を案じる様子を見せていました。

しかし、竹内氏が議員を辞職した後も、誹謗中傷は止まることを知りませんでした。告訴状によると、SNS上では竹内氏に対して「説明もなく辞めた」「何かやましいことがあったから辞めたのではないか」といった根拠のない批判が溢れ、事務所への嫌がらせも依然として続きました。

辞職後も続く攻撃と事実無根の主張

立花氏はその後も、自身の演説やSNSなどを通じて、竹内氏に対する攻撃的な言葉を発信し続けました。特に、12月13日と14日には、自身が立候補していた大阪府泉大津市の市長選挙の街頭演説において、「何も言わずに去っていった竹内県議はめっちゃやばいね。警察の取り調べを受けているのは間違いない」「いま警察に呼ばれていますよね、誰とは言いませんが、選挙の翌日に辞めた人ですよね」などと発言しました。しかし、竹内氏が警察の捜査を受けたという事実は一切なかったことが、後に明らかになっています。

今回の刑事告訴は、故人に対する名誉毀損行為が、遺族にとって計り知れない苦痛と、そして社会的な影響をもたらすことを改めて浮き彫りにしています。この訴訟の行方は、政治家による発言の責任、そしてインターネット上での誹謗中傷問題に対する社会の意識を高める上で、重要な意味を持つこととなるでしょう。