日米「相互関税」認識の食い違い議論:赤沢大臣の説明と専門家の多角的見解

タレントの恵俊彰氏がMCを務めるTBS系「ひるおび」は8日、トランプ前大統領が日本にかけると主張する「相互関税」の合意内容に関する日米間の認識の食い違いについて特集しました。訪米中の赤沢亮正経済再生担当大臣は、この食い違いを強く否定し、「過去一貫して、相互関税にかかる合意の内容についての日米間の認識に齟齬はありません」と発言。しかし、この問題の背景には複雑な外交交渉と専門家の多様な見解が存在します。

赤沢経済再生担当大臣の訪米と「修正」提案の真意

赤沢大臣は、日米間の認識に齟齬がないことを強調しつつも、トランプ前大統領に配慮する形で「事務方の手違い」を理由に挙げ、「大統領令を修正」するよう申し入れる意向を示しました。大臣は「修正」という言葉を繰り返し用い、大統領令の修正は「半年、1年ということは当然ありえない」と時期にも言及し、早期解決への意欲をにじませました。

日米「相互関税」認識の食い違い議論:赤沢大臣の説明と専門家の多角的見解

「ひるおび」MCの恵俊彰氏。日米「相互関税」問題の報道中に。

専門家が指摘する「修正」の困難とトランプ氏の思惑

この赤沢大臣の提案に対し、番組に出演した経済評論家の加谷珪一氏は、トランプ氏が「『俺は間違ったこと言ってない』と言ってくる可能性がある」と指摘しました。加谷氏は、トランプ氏のメンツを潰さないために、既存の大統領令をそのままにし、新たに「牛肉については15%」といった別の大統領令を出す方が現実的であるとの見解を示しました。

早稲田大学の中林恵美子教授もまた、「説得の大義名分が大事」とし、赤沢大臣が言及した「事務方が間違えた」という説明は「もっともトランプ大統領にとって痛くない方法」ではあるものの、トランプ氏が本当に納得するかについては懸念を表明しました。中林教授は、米国内の世論の動向も重要であると付け加えました。

明治大学政治経済学部の海野素央教授は、トランプ前大統領にとって「関税収入は多ければ多いほどいい」という原則があるとし、ラトニック商務長官が「これ間違ってました。修正してくれ」と申し入れても、トランプ氏が頷くかについては疑問符を投げかけました。海野教授は、「トランプさんはまた駆け引きをやってくる可能性がある。日本政府は注意」と警鐘を鳴らしています。

「80兆円」の曖昧さと外交交渉における発言の重み

議論の中で、加谷氏が「(日本が米国に支払うとされる)80兆円は払うとサインしてないから大丈夫ですよ。最後の手がある」と指摘すると、海野教授もこれに呼応し、「あいまいにしておくのがいいというのもある」と発言しました。しかし、海野教授は、日本国内のメディアで赤沢大臣らが「合意文書ない方がいい」や「あいまいにしとくほうがいい」といった発言をすると、在日米国大使館を通じてその情報がワシントンに伝わるため、「軽々には述べない方がいい。ネゴシエーターは」と、外交交渉における発言の重みについて厳しく指摘しました。

恵俊彰氏は、このやりとりを聞き、「これ(番組)チェックしてるってこと?」と尋ね、海野教授が「もちろん」と回答すると、「じゃ、今日はもうこの辺でよろしいですね。あんまりしゃべりすぎはよくないというお話しですから」と発言し、この話題を打ち切りました。

結論

日米間の「相互関税」を巡る認識の食い違いは、単なる事務的な誤解に留まらず、トランプ前大統領の政治的思惑や米国内の世論、そして日本の外交戦略の巧拙が問われる複雑な問題であることが、専門家の見解から明らかになりました。日本政府は、慎重な情報管理と戦略的な交渉を通じて、国益を最大化する道を探る必要があります。

参考文献