ハッブルが捉えた恒星間天体「3I/ATLAS」の鮮明な画像:太陽系を高速で駆け抜ける謎の彗星

太陽系内を驚異的な速度で移動する新たな天体「3I/ATLAS」について、ハッブル宇宙望遠鏡が捉えたこれまでで最も鮮明な画像が公開されました。この貴重なデータは、その起源と特性に新たな光を当て、恒星間空間からの訪問者に対する理解を深めるものとして、天文学界で大きな注目を集めています。

最新画像が明かす「3I/ATLAS」の姿と特徴

公開された画像には、彗星「3I/ATLAS」の核周辺の塵が、凍った部分から涙滴状に伸びる様子が詳細に写し出されています。この核は氷、塵、岩石で構成された固体であり、彗星が太陽のような恒星の近くを通過する際、熱によってガスや塵が放出され、特徴的な「尾」を形成する現象が確認できます。先月21日には、3I/ATLASは地球から約4億4500万キロの距離に位置していました。

ハッブル宇宙望遠鏡が捉えた恒星間天体「3I/ATLAS」の鮮明な画像。彗星の核から伸びる塵の尾が特徴的。ハッブル宇宙望遠鏡が捉えた恒星間天体「3I/ATLAS」の鮮明な画像。彗星の核から伸びる塵の尾が特徴的。

驚異の速度と精密なサイズ推定

3I/ATLASが最初に発見された7月1日、その移動速度は時速20万9000キロに達し、これまでの太陽系内を通過した系外からの天体としては最速記録を更新しました。ハッブル宇宙望遠鏡を用いた観測により、その小さな核の直径が最大で5.6キロ、最小で305メートルと推定され、これまでよりも具体的な彗星の大きさが判明しました。この研究成果は天体物理学誌「アストロフィジカル・ジャーナル・レターズ」に掲載されています。

恒星間天体の謎と「スリングショット効果」

3I/ATLASについては、それが宇宙の具体的にどこからやって来たのかという大きな疑問が依然として残っています。その動きは太陽系由来の他の彗星と似ていますが、その異常な速度は、この天体が銀河系内の他の恒星系から飛来したものであることを強く示唆しています。科学者たちは、3I/ATLASが恒星間空間を数十億年もの間移動してきたと推計しています。天体が宇宙空間を移動する際、恒星や星の形成領域(育星場)の重力から運動エネルギーを得る「スリングショット効果」によって、その速度は増すことがあります。したがって、3I/ATLASが宇宙空間を長く移動すればするほど、その移動速度は向上します。これまでに太陽系内で観測された恒星間天体は、2017年の「オウムアムア」と2019年の「2I/ボリソフ」の2例のみでした。

「3I/ATLAS」の年齢とその重要性

3I/ATLASの正確な年齢を特定することは非常に困難ですが、研究者たちはその年齢が67%の確率で76億歳を超えると推定しています。これは、太陽および太陽系、そしてその系内の彗星が約45億歳であることと比較すると、非常に古い天体であることを示しています。この年代の違いは、3I/ATLASが太陽系が形成されるはるか以前から存在していた可能性を示唆し、宇宙の初期段階における物質の分布や進化に関する貴重な手がかりを提供するかもしれません。

まとめ

恒星間天体「3I/ATLAS」の発見とハッブル宇宙望遠鏡による鮮明な画像は、太陽系外からの訪問者に対する私たちの理解を大きく前進させました。その驚異的な速度、推定されるサイズ、そして数十億年におよぶ宇宙の旅の痕跡は、宇宙の広大さと多様性を改めて示しています。今後も、地上の望遠鏡などを用いた観測を通じて、その化学的組成や具体的な起源に関するさらなる情報が明らかになることが期待されます。


参考文献:

  • Original Article: CNN (via Yahoo News) – 「太陽系内を猛スピードで移動する「恒星間天体」、これまでで最も鮮明な画像公開 ハッブル望遠鏡」(ハッブル宇宙望遠鏡が捉えた恒星間天体「3I/ATLAS」の画像) https://news.yahoo.co.jp/articles/5953fb15f56863edd0c3585e9c8b0d8cd1a3b03f
  • Astrophysical Journal Letters (mentioned in article)