イスラエルがパレスチナ自治区の中心都市ガザ市を制圧する計画を発表したことを受け、世界各国からは8日、紛争のさらなる悪化と流血を招くとして、非難の声が相次いでいる。この計画は、既に深刻化しているガザ地区の人道状況を一層悪化させるとの懸念が国際社会全体に広がっており、各国政府や主要国際機関が即時停止を求める声明を発表している。本稿では、このガザ市制圧計画に対する国際社会の主な反応を詳細にまとめる。
米国の微妙な立場と主要国際機関の強い懸念
イスラエルとの関係が深い米国は、この計画に対し明確な反応を示していない。ドナルド・トランプ米大統領は5日、ガザへの人道支援強化に注力しており、「それ以外のことは、ほぼイスラエル次第」と述べるに留まった。
一方、国際機関は強い懸念を表明している。国連のアントニオ・グテレス事務総長は、イスラエルの計画を「危険なエスカレーション」と指摘し、パレスチナ市民の状況悪化のリスクを強調した。ボルカー・ターク国連人権高等弁務官は、計画の「即時停止」を求め、イスラエルには「人道支援の完全かつ妨げのない流れ」を、パレスチナの武装勢力には無条件での人質解放を要求した。外交筋は、複数の国がこの計画について国連安全保障理事会の緊急会合を要請したと明らかにしている。
欧州連合(EU)も同様の立場を示している。欧州委員会のウルズラ・フォンデアライエン委員長はX(旧ツイッター)上で、「イスラエル政府がガザでの軍事作戦をさらに拡大するという決定は再考されるべきだ」と述べた。フォンデアライエン委員長は、停戦、人質の全員解放、そしてガザでの「即時かつ妨げのない人道支援のアクセス」を求めた。
イスラエルによる空爆で破壊されたガザ市内の建物群と、その中に設けられた避難民用の仮設シェルターの様子
パレスチナ武装勢力と中東諸国の反発
イスラム組織ハマスは、イスラエル政府の計画を「占領軍がガザに対して犯そうとしている新たな戦争犯罪」と非難し、この作戦が「高い代償を伴う」と強く警告した。ハマスを支援するイランの外務省報道官も、この計画は「ガザを民族浄化し、パレスチナ人に対してジェノサイド(集団殺害)を行うというシオニスト政権の明確な意図の、もう一つのはっきりとした兆候」であると述べ、イスラエルを厳しく批判した。
中東地域の各国も計画に反対の声を上げている。トルコは計画阻止のための国際的な圧力を求め、外務省は「パレスチナ人を自らの土地から強制的に追放することを目的としたこの決定の実施を阻止するために、国際社会がその責任を果たすことを求める」との声明を発表した。ヨルダン王室が発表した声明では、アブドラ国王が「二国家間の解決とパレスチナ人の権利を損なう」動きを非難したと述べられた。エジプト外務省は、ガザに対するイスラエルの計画を「可能な限り最も強い言葉で」非難し、地域の安定への懸念を示している。
主要国の懸念と行動
中国外務省報道官はAFPに対し、「ガザはパレスチナの人々のものであり、パレスチナ領土の不可分な一部である」と述べ、「ガザの人道危機を緩和し、人質の解放を確実にするための正しい方法は、即時停戦である」と強調した。
ドイツのフリードリヒ・メルツ首相は、イスラエルの軍事計画が正当な目的の達成にどのように役立つのかを「理解することがますます困難になっている」と表明した。さらに、「このような状況下では、ドイツ政府は、ガザ地区で使用される可能性のある軍事装備の輸出を当面承認しない」と述べ、計画に対する不信感と実質的な行動を示した。
カナダのマーク・カーニー首相は、「この行動が現地の人道状況の改善に寄与することはない」と述べ、多くの国々と同様にこれを誤りだと見なしているとした。また、英国やフランスとともに、来月の国連総会でパレスチナを国家として承認するという意向を再確認し、二国家解決への支持を明確にした。
結論
イスラエルによるガザ市制圧計画は、国際社会から広範な非難と深い懸念を呼び起こしている。国連やEUといった主要な国際機関に加え、中国、ドイツ、カナダ、トルコ、ヨルダン、エジプトなど多くの国々が、人道状況の悪化、紛争のエスカレーション、そしてパレスチナ人の権利侵害を警告している。米国が明確な姿勢を示さない中で、国際社会はガザにおける即時停戦、人質解放、そして人道支援への無制限なアクセスを強く求め、持続可能な平和的解決に向けた外交努力の重要性が改めて浮き彫りとなっている。
参考資料
- AFP=時事
- Yahoo!ニュース
- AFPBB News