日本の刑事司法制度は、推定無罪の原則を掲げながらも、その運用には多くの批判が寄せられています。特に、有罪判決が確定していない段階での長期拘禁や、自白の有無が保釈の条件に影響を与える実態は、国際社会からも注目されています。詐欺罪で一審が継続中の天野遥被告(36)のケースは、この問題の深刻さを浮き彫りにしています。彼女は有罪判決を受けていないにもかかわらず、6年以上にわたり独房に拘禁され、精神の崩壊を感じながらも「虚偽の自白は決してしない」という意思を貫いています。この状況は、自白強要が日本の99%という高い有罪率を支えているとの批判に拍車をかけています。
天野遥被告:詐欺罪で一審継続中、東京拘置所に6年以上拘禁される未決拘禁者
長期拘禁下での「すべてを失った」生活
天野被告は東京・小菅の東京拘置所の面会室でAFPに対し、「逮捕された時点から、(死刑囚を含む)受刑者と同じような生活をさせられている」と語りました。2018年に組織的詐欺に関与した疑いで逮捕されて以来、彼女は外部との連絡を許可されず、レストラン経営の仕事、パートナー、そして精神的な健康を含め「すべて失った」と感じています。「たぶん何らかの精神疾患になっているが、まともな診察の機会すらないので体の状態が分からない」と、透明の間仕切り壁越しに訴えました。
彼女が拘禁されている独房は三畳の畳が敷かれ、エアコンはありません。夏場に涼しさを感じるのは、食事用の小窓から届くわずかな風のみです。日中は横になったり壁にもたれたりすることもほぼ許されず、畳の上に座って過ごすことを強いられています。逮捕後、体重は約30キロも減少したといいます。弁護士以外との連絡は原則許可されず、家族を含むその他の人との接触も制限されています。
家族との分断と人権団体の警鐘
天野被告は、「溺愛していた」という現在7歳の娘と最後に顔を合わせたのは6年前だと明かし、「自分のことを覚えているかどうか分からない」と、娘への深い思いと不安を口にしました。
人権団体は、日本では被疑者が黙秘したり自白を拒否したりすると、長期の未決勾留が行われ、自白が事実上の釈放条件と見なされるケースが多いと指摘しています。これは「人質司法」とも呼ばれ、国際社会からの批判の的となっています。自白の強要とも受け取られかねないこの慣行は、被疑者の人権を侵害する可能性が懸念されています。
自白の有無で異なる保釈率:データが示す日本の司法の現実
日本の刑事司法における自白の重要性は、保釈率のデータにも明確に表れています。法務省の刑事手続きに関する協議会に提出された資料によると、2021年の通常第一審事件において、自白した事案では1か月以内に7割が保釈されたのに対し、否認した事案で同期間内に保釈されたのは約3割に過ぎませんでした。この統計は、自白しないことがいかに長期勾留に繋がりやすいかを示しており、日本の司法制度における「推定無罪の原則」が、実態として機能不全に陥っている可能性を示唆しています。
天野被告の事例は、日本の刑事司法制度が抱える根深い課題、特に未決拘禁者の人権保護と推定無罪原則の遵守において、いまだ多くの改善の余地があることを浮き彫りにしています。国際的な基準に照らし合わせても、日本の長期未決拘禁の実態は早急な見直しが求められる状況です。
Source: https://news.yahoo.co.jp/articles/f2edab95314f4a2383453e823309bb23749d0536