中国内陸部・甘粛省天水市の幼稚園で、鉛入りの顔料を混ぜた食事を園児に提供し、200人以上の園児が中毒で入院する事件が発生した。中国の教育現場ではこれまでも、食の安全に関する問題が相次いでおり、保護者の不満が高まっている。中国政府も対策強化に乗り出した。(甘粛省天水 出水翔太朗、写真も)
国営新華社通信などによると、この幼稚園では昨年5月以降、食事の見た目を良くして新規入園者を増やすことを目的に、「食用不可」と書かれた鉛入りの顔料を蒸しパンなどに混ぜて園児に提供していた。園児251人のうち235人が入院し、抜け毛や歯の変色、腹痛などを訴える園児も出た。地元当局が今年7月上旬に調査した結果、食事からは国の基準の2000倍もの鉛が検出されたという。
7月下旬、幼稚園を訪れると、周囲に複数の公安当局の車両が配備され、私服の治安要員とみられる男性が目を光らせていた。数日前には保護者ら数百人が幼稚園の周辺に押し寄せる騒ぎが起きていた。
官製メディアは、「解毒薬は十分に行き届いている」などと地元当局が迅速な対応を行ったと強調しているが、保護者らの不信感は根強い。園児の血液検査を行った病院が検査結果を改ざんしていたことが発覚し、陝西省西安や上海など別の都市で子供に治療を受けさせた保護者もいる。
国連児童基金(ユニセフ)は事件を受け、「子どもの身体と脳に長期的な損傷を引き起こす可能性がある」との声明を発表し、懸念を表明した。ある保護者は「健康被害が一生続くかもしれない。何も信用できない」と憤った。
中国では今年5月にも、浙江省余姚市の学校の調理器具から大量の虫が確認されるなど、教育現場で食の安全に関する問題が繰り返されている。甘粛省での事件発覚後、国家市場監督管理総局は、幼稚園や小中学校で食事を提供する業者向けのガイドラインを策定した。調理過程をインターネット上で保護者らに公開するといったルールが盛り込まれており、12月から実施される予定だ。