米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)は9日、ウクライナと欧州諸国が、ロシアによるウクライナ侵略の停戦プロセスに関し、一部のウクライナ領土割譲を伴うプーチン露大統領の提案に対し、独自の「対案」をトランプ米政権に提示したと報じました。この動きは、来る米露首脳会談に先立ち、ロシアに一方的に有利な決定をしないようトランプ氏に警告するものです。
ウクライナ・欧州連合の「対案」提示とその背景
欧州諸国とウクライナは同日、英国でバンス米副大統領を交えた協議を開催し、その詳細に詳しい消息筋がWSJに内容を明かしました。これは、トランプ米大統領が米北部アラスカで15日にプーチン露大統領と対面会談し、ウクライナ停戦問題を協議する予定がある中で行われました。この会談では、米露がウクライナの頭越しに同国領の対露割譲を決定する可能性が指摘されており、ウクライナと欧州はこれに強く懸念を表明しています。
アラスカでのプーチン大統領との会談を前に、ウクライナ問題で対案を検討するトランプ大統領
「対案」の具体的内容とロシア側の要求
WSJが報じた「対案」には、停戦は無条件であるべきだとの主張や、ウクライナが領土割譲に応じる場合でも、ロシア軍はその他の占領地から撤退すべきだとの内容が含まれています。さらに、北大西洋条約機構(NATO)加盟を含む強力な安全保障をウクライナに提供することも盛り込まれています。
これに先立ち、プーチン氏は6日にモスクワで行われた米国のウィットコフ中東担当特使との会談で、ウクライナ軍が東部ドネツク州から撤退すればロシアは停戦に応じるとの立場を示していました。また、ドネツク州と既に制圧を宣言している東部ルハンスク州、南部クリミア半島の対露割譲が実現すれば、南部ザポリージャ州とへルソン州での戦闘を停止する考えも伝えられています。
今回の「対案」提示は、ウクライナ紛争の外交解決に向けた国際社会の複雑な駆け引きを浮き彫りにしています。米露首脳会談でどのような結論が出されるのか、今後の動向が注目されます。
参考文献
- ウォールストリート・ジャーナル (The Wall Street Journal), 2025年8月9日.
- 共同通信社 (Kyodo News), 2025年8月9日.
- Yahoo!ニュース, https://news.yahoo.co.jp/articles/e86d772e7f37a463e1703136866cc133e108b2bb