ドラマ「良いこと悪いこと」最終話:新木優子と剛力彩芽の扱いは適切だったか

12月20日(土)に最終話(第10話)が放送され、SNSやネットニュースで大きな話題を集めた間宮祥太朗と新木優子のダブル主演作『良いこと悪いこと』(日本テレビ系)。考察ドラマとしてもバズった本作の結末は、男性主人公の行動に「これしかない」と納得の声が上がる一方で、新木優子と剛力彩芽が演じた女性キャラクターの扱いに疑問符が投げかけられています。本記事では、最終話で描かれた物語の着地と、主要キャストの役回りについて深く掘り下げていきます。

間宮祥太朗演じる主人公の「納得の結末」

物語は、小学校時代の同窓会でタイムカプセルを掘り起こした元6年1組のクラスメイトたちが、卒業アルバムの猿橋園子(新木優子)をいじめていた6人の顔が黒く塗りつぶされているのを発見するところから始まります。この6人が次々と狙われる連続殺人ミステリーとして展開。クラスのリーダー的存在だった高木将(間宮祥太朗)もいじめグループの一員でしたが、第9話までに高木以外の5人はすでに殺害されていました。

【ネタバレあり】事件の真相は、6年生時代ではなく、高木たち6人が5年生時代に行っていたいじめに対する復讐が目的でした。5年生のころ、高木たちからいじめを受けていた少女が不登校となり転校。大人になって偶然高木と再会したことで心の傷がぶりかえし、自死していたのです。犯人たちはその女性と関係が深い3人でした。高木たちがいじめられた側に一切非がない些細なきっかけから始めた陰湿で凄惨ないじめは、擁護のしようがないほどひどいものでした。

ドラマや映画で主人公にここまで問答無用で非があるケースは珍しく、それゆえに高木の最終的な決断・行動に注目が集まりましたが、「これしかない」と思える見事なケジメのつけ方でした。高木は自らの意思で、週刊誌記者・園子の顔出しインタビューを受けることを決意。自身や家族が世間から厳しく糾弾されるのを覚悟のうえで、カメラの前で過去のいじめを正直に語り、懺悔したのです。被害者は既に亡くなり、犯人たちの人生も大きく狂ってしまいましたが、現在の高木にできることとしては納得の落としどころと言えるでしょう。

終盤で希薄になった新木優子の存在感

作品の着地の仕方に大きな不満はないものの、新木優子と剛力彩芽の扱いに少々疑問が残ります。まず新木優子が演じた女性主人公・猿橋園子についてですが、物語が佳境に入った終盤で、彼女の存在感がかなり薄れてしまった点が気になりました。

犯人のターゲットが園子をいじめていたグループだったことから、序盤から中盤にかけて、園子の存在意義は非常に大きかったです。しかし終盤に入り、いじめられていた人物がもう一人いて、その復讐が真の目的であると匂わされたことで、園子は良くも悪くも事件の当事者ではなくなってしまいます。いじめられていた少女の仲間がいじめっ子グループに復讐するという対立構図において、園子は無関係な立ち位置に。ぶっちゃけ女性主人公がいなくても物語が進められるようになってしまい、実際、最終話前の第9話では「空気」とまでは言わないものの、だいぶ存在感が薄かったと言わざるを得ません。

ドラマ「良いこと悪いこと」に出演する新木優子の姿ドラマ「良いこと悪いこと」に出演する新木優子の姿

さすがに最終話では多少見せ場があり、犯人のうちの一人と対峙する長尺シーンがありましたが、主に喋っていたのは犯人側で、園子は正論で返すに留まっていました。同時進行で、高木が別の場所でもう一人の犯人と対峙していましたが、こちらは当事者同士だけあって緊迫感はMAX。高木を演じる間宮祥太朗の鬼気迫る演技も相まって、完全に高木側のシーンが本作のクライマックスとなっていました。園子のポジション上、終盤で存在感が薄くなるのは分かっていたことだと思いますが、最後まで必要不可欠な役回りを与えてほしかったと感じます。

剛力彩芽の起用は「無駄遣い」か「贅沢な使い方」か

剛力彩芽が演じた土屋ゆきの扱いについても気になります。ゆきはクラスメイトでしたが、いじめグループにも入っておらず、いじめられっ子でもありませんでした。彼女は第1話の同窓会シーンには登場しましたが、第2話からしばらく出番がなく、本格的に主人公たちの仲間として登場したのは第7話以降でした。ご存知の通り、剛力彩芽はかつてドラマや映画の主演を次々とこなしていた売れっ子俳優です。

そのため、中盤までほとんど登場せず、登場したと思ったら仲間に加わったことで、「怪しくないところが逆に怪しすぎる」と、ゆきが真犯人の有力候補と目されていました。もし本当にただの善良なキャラクターであれば、出番も少なく見せ場もほとんどないため、「剛力彩芽の無駄遣い」だと感じた視聴者も少なくなかったはずです。

しかし、結局ゆきは真犯人ではなくただの善良な人物であり、さらに終盤の第9話や最終話の出番はごくわずかでした。本当に「剛力彩芽の無駄遣い」状態だったため、多くの視聴者が肩透かしを食ったことでしょう。

ただし、見方を変えれば「剛力彩芽の贅沢な使い方」とも言えます。考察ミステリー作品において、真犯人は視聴者に最後までバレない方が良いため、あからさまに怪しい言動や演出がない場合が多いです。さらに知名度の低い役者を起用すると最終話が盛り上がらないため、真犯人には人気俳優がキャスティングされる傾向にあります。剛力彩芽演じるゆきは、この条件を見事にクリアしていたからこそ視聴者に疑われていたわけです。

剛力彩芽演じるゆきは、そうやって視聴者のミスリードを誘うために制作陣が配置したキャラクターだったのでしょう。「剛力彩芽をこんな出番が少なく、毒にも薬にもならない役でキャスティングするわけがない」という視聴者の思い込みを、見事にかいたと言えます。

そう考えると、新木優子の終盤の使い方はもっと工夫してほしかったものの、出番が少なく善良なキャラクターとして剛力彩芽を出演させたことは、決して無駄遣いではなく、最高に贅沢なキャスティングだったのかもしれません。


筆者: 堺屋大地 (恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー)
出典: Smart Flash / Yahoo!ニュース