「自分の好きなことがわからない」「周囲に合わせすぎて疲れてしまう」――現代社会において、このような悩みを抱える人は少なくありません。職場、学校、家庭といった様々な場で期待される役割に応えようとするあまり、自身の感情を押し殺してしまうことも頻繁に起こります。このような生きづらさを感じた時、多くの人々の心を軽やかにする一冊として、幅広い世代から支持を集めているのが、ベストセラー書籍『大丈夫じゃないのに大丈夫なふりをした』（クルベウ著・藤田麗子訳）です。本記事では、精神科医さわ先生へのインタビューを通して、この書籍から導き出される「自分らしく生きる」ための重要なヒントと、自己肯定感を育む道筋について探ります。
「周りに迷惑をかけない」生き方がもたらす「生きづらさ」の本質
幼少期から親や周囲の目を気にし、「迷惑をかけないように」と意識して生きてきた人は少なくありません。しかし、このような生き方は、時に「自分らしい」あり方を難しくさせ、大きな生きづらさにつながることがあります。精神科医さわ先生は、まず「自分は他人の目を気にして生きてきたのだ」という事実に気づくことが、この苦しい状況から抜け出す第一歩だと指摘します。なぜなら、その状態に気づかないまま他者に振り回されていることこそが、最も辛い状態だからです。
私たちの社会は、競争や評価の文化が深く根付いています。そのため、成績や成果で自身の価値を測ってしまうのは、ある意味で自然なことかもしれません。しかし、さわ先生は、どんな自分であっても、その存在自体に価値があるという根本的な真実を知ってほしいと語ります。この視点は、自己肯定感を育む上で不可欠であり、過度な承認欲求や人間関係の悩みから解放されるための重要な鍵となります。
精神科医さわ先生の肖像。自己肯定感の重要性と自己受容について語る専門家。
自分に価値を見出せない時の処方箋：自信を取り戻す自己対話の力
「ありのままの自分に価値がある」という感覚を育み、自己肯定感を取り戻すためには、具体的にどのようなアプローチが必要なのでしょうか？さわ先生は、まず「自分自身に向ける言葉」を変えていくことの重要性を強調します。例えば、うつ病で苦しむ患者が自身を責め続ける時、さわ先生は「もし、あなたの大切な人が、今のあなたと同じようにとてもつらい状況にありながら、それでも頑張らなければならないと思い詰めていたとしたら、あなたは何と声をかけますか？」と問いかけることがあるそうです。
多くの患者は、大切な人であれば「無理しないで」「休んでいいよ」と優しく声をかけると答えます。大切な人に対して「それでも頑張れ」とは決して言わないでしょう。だからこそ、その大切な人にかける言葉を、ぜひ自分自身にもかけてあげてほしいと、さわ先生は促します。
このように「自分に優しい声がけをする練習」を積んでいくことこそが、自己受容への道を開き、ひいては揺るぎない自信を取り戻すことにつながっていくのです。これはセルフコンパッション（自分への慈悲）とも呼ばれる心理学的なアプローチであり、心の健康を保つ上で非常に有効な手段となります。
まとめ：自己受容が「自分らしく生きる」ための羅針盤
現代社会で多くの人が抱える「生きづらさ」は、往々にして他人の目を気にしすぎ、自己肯定感を見失うことに起因します。精神科医さわ先生の提言は、この問題に対する具体的な解決策を示してくれます。それは、まず「他人に合わせすぎてきた自分」に気づき、そして「大切な人にかける言葉を自分自身にもかける」という自己対話の習慣を実践することです。
ありのままの自分を受け入れ、自身に価値を見出す自己受容のプロセスは、時に困難に感じるかもしれません。しかし、この小さな一歩が、私たちを真に「自分らしく生きる」ための羅針盤へと導き、より健全で豊かな人生を築く礎となるでしょう。この専門家の視点を通じて、多くの読者が心の負担を軽減し、前向きな一歩を踏み出すきっかけを得られることを願います。
