高速バスの利用客の間で、特定の座席確保を目的とした「相席ブロック」と呼ばれる行為が深刻な問題として浮上しています。この行為は、一見すると空席があるように見えても、他の乗客が座席を予約できないという事態を引き起こし、運行会社と一般利用者の双方に多大な迷惑をかけています。JRバス関東が公式X(旧Twitter)で注意喚起を行うなど、社会的な関心も高まっており、その実態と対策が注目されています。本記事では、この「相席ブロック」のメカニズム、JRバス中国が講じる具体的な対策、そしてその対策が直面する課題について深く掘り下げていきます。
高速バスを悩ませる「相席ブロック」とは?
「相席ブロック」とは、高速バスの乗車時に一人で利用する乗客が、隣の席を確保するために二席分を並びで予約し、乗車直前に片方の席をキャンセル(払い戻し)するという行為を指します。これにより、実質的には隣の席を空席に保つことができます。
この行為が問題となるのは、キャンセルされた席が、他の利用者が予約しようとした際には既に「満席」として表示され、予約が不可能になるためです。結果として、バスが運行される際には実際には空席があるにもかかわらず、他の乗客はその席を利用できないという不公平な状況が生じます。多くの場合、乗車直前のキャンセルであっても払い戻し手数料が数百円程度と安価であるため、一部の利用者にとっては「安価に広い空間を確保する裏技」として悪用されていると考えられています。
相席ブロックにより予約できず空席の高速バス座席
今年のゴールデンウィーク前には、高速バスを運行する「JRバス関東」が公式X(旧Twitter)上で、「意図的に相席をブロックするご予約などは、他のお客さまのご迷惑となりますので、絶対におやめください」と異例の呼びかけを行い、大きな話題となりました。これは、運行会社側がこの問題に頭を悩ませている現状を如実に示しています。
JRバス中国が語る実態と運賃改定の裏側
弁護士JPニュース編集部の取材に対し、JRバス中国の担当者は「相席ブロック(空予約)」について、「詳細までは把握できていないが、被害があるのは事実」と明確に語っています。乗務員からも、乗車した利用客の前後や隣の席がまとめて予約され、乗車日直前にキャンセルされる事例が報告されており、その実態は現場レベルでも認識されています。
このような状況を受け、JRバス中国は今年9月1日に一部の高速バスの運賃改定に合わせ、払い戻し手数料の見直しを実施しました。これまでは一部の便で、乗車時刻まで片道100円の手数料のみで払い戻しが可能でしたが、改定後は、出発時刻の2時間前までのキャンセルにはきっぷ券面記載額(運賃等)の50%、2時間前以降のキャンセルには100%の手数料を徴収する方針へと変更されました。
担当者は、この手数料改定の背景に「相席ブロック防止」の狙いがあることを認めています。手数料を引き上げることで、安易なキャンセルによる相席ブロック行為への抑止効果を期待しているのです。
対策の難しさ:「いたちごっこ」の現状
JRバス中国は、払い戻し手数料の改定以外にも、相席ブロック対策として様々な取り組みを検討・実施しています。担当者によると、「他社でも同様の事例が散見されたことから、払い戻し手数料の改定のみでなく、予約から購入までの期間を短く設定することや、一度の予約可能数を少なくするなど、各社と知恵を絞りながら相席ブロック(空予約)対策を行っている状況」とのことです。
しかし、これらの対策を講じても、問題の解決は容易ではないのが現状です。担当者は「キャンセル料を払ってでも相席を拒む方もいらっしゃり、対策を講じてもいたちごっこで有効な手だてがないのが現状です」と苦しい胸の内を明かしています。これは、個人の快適性を追求するあまり、高額なキャンセル料を支払ってでも相席を避けたいと考える利用者が一定数存在することを示しており、運行会社は根本的な解決策を見つけることに難航しています。
結論
高速バスにおける「相席ブロック」は、運行会社にとって座席の有効活用を妨げ、一般利用者にとっては公平な座席予約機会を奪う迷惑行為です。JRバスをはじめとする各社は、運賃改定や予約システムの変更など、様々な対策を講じていますが、悪質な利用客との「いたちごっこ」が続いているのが実情です。
この問題の解決には、運行会社による継続的な対策はもちろん、利用客一人ひとりのマナー意識向上と、公共交通機関を皆で利用するという社会的なモラルの醸成が不可欠です。今後も、各社の取り組みと社会全体の意識変化が注視されるでしょう。
参考資料
- Yahoo!ニュース(弁護士JPニュース)「高速バス「相席ブロック」JRバスが対策に動くも「いたちごっこ」 問題行為に法的責任は?」(2025年9月2日掲載)