日本政府が75歳になると国が死を支援する「PLAN75」を導入し、安楽死を選択した者に一時金10万円を支給するという――これは2022年カンヌ国際映画祭で特別賞を受賞した早川千絵監督の映画「PLAN75」が描いた、超高齢社会の日本の仮想的な未来です。現実の韓国は、2024年末には全人口の5人に1人が65歳以上となる超高齢社会に突入しました。このような社会構造の変化は、生産可能人口の減少、高齢者扶養費の増加、内需市場の沈滞、地域の消滅、世代間対立など、多岐にわたる経済的・社会的問題を引き起こします。そのため、徹底した事前準備が不可欠です。
日本は韓国に先行すること約20年前の2007年に超高齢社会へ突入しました。少子高齢化がもたらした構造的な低成長からの脱却を目指し、大規模な金融緩和、積極的な財政政策、企業活力の向上など、多角的な努力を続けてきました。これらの政策に支えられ、近年、日本経済は長期間にわたる低迷から脱却し、新たな変化を模索しながら肯定的な兆候を見せています。人口減少の危機に直面する日本がどのように対応してきたかの事例は、同じ課題を抱える韓国が何を、どのように準備すべきかを示す明確な羅針盤となるでしょう。本記事では、ウリィ金融研究所による書籍『日本経済大転換』の内容を基に、日本の取り組みとそこから得られる示唆を探ります。
日本経済の長期停滞からの脱却と新たな模索
長寿が真の祝福となるためには、事前の周到な準備が必須です。日本が超高齢社会に突入して10年が経過した2017年、高齢社会における金融サービス基本方針を策定し、生涯にわたる資産管理サービス体系を構築しました。この取り組みは、韓国にとっても早期に着手すべき重要な課題です。
高齢化社会への適応と金融・社会制度の革新
日本で注目すべき制度の一つが、韓国の個人総合資産管理口座(ISA)や個人型退職年金(IRP)に類似する少額投資非課税制度(NISA)と個人型確定拠出年金(iDeCo)です。これらの制度は、大幅な恩恵拡大と加入対象の拡大が図られ、高齢期の資産形成を強力に支援しています。その他にも、自宅を担保に生活資金を借り入れるリバースモーゲージや、売却後に賃貸として住み続けるセールスアンドリースバックといった金融商品の活用が進んでいます。さらに、療養産業の構造再編、介護保険制度の充実、そして信託制度の改編を通じた遺言代用信託や事業継承信託の活性化は、多くの示唆を与えます。
特に信託の活性化は注目に値します。東京の繁華街にある百貨店の5階に三井住友信託の店舗が、百貨店の営業時間に合わせて運営されている事例は、金融サービスが利用者の生活動線に深く統合されていることを示し、高齢者のアクセス向上に貢献しています。
日本経済大転換の書籍表紙イメージ。ウリィ金融研究所が著し、日本の超高齢社会と経済変革への対策を解説。
労働力不足への対応と企業文化の変革
一方、労働力不足の深刻化と人材確保の重要性の増大は、日本の企業文化に大きな変化を促しました。成果主義への転換、女性人材の育成推進、副業・兼業の許容といった柔軟な労働条件の導入はその代表例です。育児休職使用を奨励するための同僚支援金支給のような具体的な政策も実施されています。かつて保守的と見なされがちだった日本の企業文化は、すでにグローバルレベルへと進化を遂げていると言えるでしょう。
新たな成長エンジンと資本市場の動向
長期的な低迷に苦しんでいた日本企業にも、持続的な景気浮揚策と構造改革により資金が循環し始めました。特に大企業を中心に、デジタル転換と生産能力拡大のための設備投資が増加傾向にあります。日本の資本市場も急速な回復を見せており、2025年5月末の日経平均株価の合計時価総額は713兆円に達し、2012年末の199兆円から3.6倍に増大しました。
日本の企業金融市場で特筆すべきは、不動産金融と転換金融の分野です。日本の不動産金融エコシステムは自己資本比率を高め、財務の安定性と効率性を確保している点が特徴です。また、東京の都心再開発の成功事例は、韓国の不動産プロジェクトファイナンス(PF)市場が今後進むべき方向性を示唆しています。
さらに、気候変動対応のための日本の転換金融(Transition Finance)の導入と活性化事例は、韓国の金融業界における新たな事業機会創出の可能性を示唆しています。日本が製造業の比重と地理的限界から、いわゆる「グリーン活動」だけではカーボンニュートラルの達成が困難であると認識し、「転換」を主要な突破口とした背景、政府の基準設定、金融支援制度、メガバンクの役割といった具体的な事例は、韓国の金融機関が参考にする価値が大いにあります。
結論:人口減少克服への日本の知恵と韓国への期待
書籍『日本経済大転換』は、少子高齢化や生産性の鈍化といった社会の構造的問題に対し、政府、企業、家計といった全ての経済主体が共に悩み、準備を進めることを願って出版されました。可能な限り現地での直接インタビューなどを通じ、韓国では触れる機会の少ない具体的な事例を盛り込む努力がなされています。この本に書かれた事例は、日本の多様な側面のごく一部に過ぎないかもしれません。今後、より広範な分野で、多様な視点からの研究と議論が活発に行われることを期待します。
少子高齢化と低成長という避けられない大きな流れの中で、圧縮成長という神話を成し遂げた大韓民国が、いち早く新たな代替策を見出し、人口消滅の危機を克服した世界的な模範事例(ベストプラクティス)となることを期待しています。
参考文献
- 『日本経済大転換』ウリィ金融研究所著|ウィズダムハウス|2万2千ウォン
- Source: https://news.yahoo.co.jp/articles/4b65acb6a3dfd6510158094e9caa0fff40234d0c