新幹線や特急列車で、隣の席に荷物を置いたり、よりゆったりと過ごすために1人で2席分を購入したいと考える方は少なくないでしょう。しかし、このような利用方法はJRの規則上、認められているのでしょうか。本記事では、この疑問について、JR各社の旅客営業規則を基に詳しく解説します。
基本ルール:1人で2席以上の利用は不可
結論から言うと、JRの列車では、基本的に1人で2席以上を使用することはできません。「2席分の料金を支払っているから問題ない」という考えは、JRの規則に反します。
JR各社の旅客営業規則(運送約款)は、この点について明確に定めています。例えば、JR東海の旅客営業規則第147条第5項には、以下のように記載されています。
「同一旅客は、同一区間に対して有効な2枚以上の同種の乗車券類を所持する場合は、当該乗車については、その1枚のみを使用することができる。同一旅客が、同一区間に対し有効な2枚以上の指定券を所持する場合についてまた同じ」
これは、たとえ同じ区間の指定席券を2枚購入したとしても、1人の乗客が同時に使えるのはそのうち1枚だけであることを意味します。このルールはJR東海だけでなく、JR旅客5社すべてに共通して適用されます。さらに、東武鉄道、小田急電鉄、近畿日本鉄道といった主要な私鉄で有料特急列車を運行する会社も、基本的に同様の規則を設けています。
きっぷを購入した時点で運送約款が適用されるため、「知らなかった」「契約した覚えがない」といった主張は通用しません。仮に2席分を購入しても、実際に利用が確認されなければ、もう1席は「空席」とみなされるため、結果として費用が無駄になるだけです。
新幹線車内の座席風景、1人で2席を確保することに関するJRの規則について
例外規定:個室や車両貸し切り
「1席」単位ではなく「1室」単位で販売される個室は、上記のルールが適用されない例外です。例えば、寝台特急「サンライズ出雲・瀬戸」に設定されている2人用B寝台個室「サンライズツイン」は、1人でも利用することが可能です。この場合、1人分の乗車券に加え、2人分の特急券とB寝台券(1室分)が必要です。ただし、大人2人が同時に1つの寝台を共有することはできません。座席も同様です。
また、車両全体を貸し切る場合も個室と同様の考え方になります。例えば、力士が団体で新幹線を移動する「相撲列車」では、その体格の観点から隣り合う2席のひじ掛けを収納して座るケースも見られることがあります。
マナーと公共性:自由席における注意点
指定席ではない普通列車のボックス席などにおいても、1人で複数の席を占有する行為は、本来その席に座れるはずの他の乗客が立たされることになります。特に混雑時はマナーの観点から大きな問題となります。混雑の有無にかかわらず、他の乗客の利用を妨げるような行為は控え、公共交通機関としての配慮が求められます。
まとめ
新幹線や特急列車において、1人が2席を個人的な目的で使用することは、JRをはじめとする多くの鉄道会社の旅客営業規則で認められていません。例外として個室や車両貸し切りなど、「席単位」ではなく「室・車両単位」で販売される場合にのみ、特別な規定が適用されます。快適な移動を望む気持ちは理解できますが、ルールを遵守し、特に混雑時には他の乗客への配慮を忘れないことが重要です。
乗りものニュース編集部