ビジネスの世界で「無理だ」「誰が買うのか」と却下され続けたアイデアが、後に大ヒット商品へと生まれ変わる。大阪の企画・製作会社「ヘソプロダクション」代表、稲本ミノル氏（49）のキャリアは、まさにその逆転劇を体現しています。かつて1000本以上の企画がお蔵入りになった不遇のサラリーマン時代を経て、現在では年商24億円を稼ぎ出すヒットメーカーとして名を馳せています。彼の生み出す商品は、見る人に「二度見」させ、思わず誰かに話したくなるような、ユニークなものばかりです。
トランプ大統領に贈呈された「金色のミャクミャク貯金箱」の衝撃
2025年4月18日、米ホワイトハウスのトランプ大統領執務机の上に、ある日本の贈呈品が置かれました。それは、大阪・関西万博の公式キャラクター「ミャクミャク」をモチーフにした「金色のミャクミャク貯金箱」。関税交渉のために渡米した赤澤亮正経済再生担当大臣が手土産として贈ったこの商品は、日本国内はもとより中国でも大きなニュースとなり、一躍脚光を浴びました。大阪・関西万博会場内の販売店には、この貯金箱を求めるインバウンド客が殺到。8800円という高額にもかかわらず、わずか1ヶ月で1000個が完売し、フリマサイトでは2万3000円で転売されるほどの人気を博しました。この話題の商品を企画・製作したのが、稲本ミノル氏率いるヘソプロダクションです。
トランプ大統領への贈呈品として話題になった金色のミャクミャク貯金箱
独創的なアイデアでヒットを生み出すヘソプロダクション
ヘソプロダクションは、雑貨、菓子、土産物などの企画・製作から卸売までを一貫して手掛ける企業で、一部商品は自社店舗での小売も行っています。稲本氏がこれまでに世に送り出してきたヒット商品は、そのどれもが型破りなアイデアに満ちています。
例えば、2017年に発売された「忖度まんじゅう」は、森友学園や加計学園を巡る問題で流行した「忖度」という言葉を焼き印した商品です。シリーズ累計30万箱を突破する大ヒットとなり、「忖度」はその年の流行語大賞も受賞しました。
また、2019年4月22日には、岐阜県関市の平成（へなり）地区にある「元号橋」で「平成最後の空気」を採集し、「平成の空気缶」として発売。中身が「空気」と「令和時代でも良いご縁があるよう祈りを込めた平成の五円玉」だけという斬新なコンセプトで、1080円で販売された1000缶が、わずか30分で完売するという伝説的な売上を記録しました。
2018年から現在も売れ続けている「マジックインキ」型の容器入りふりかけ、その名も「マジックふりかけ」もまた、累計100万本以上を売り上げるロングセラー商品となっています。これらの商品は、そのユニークさから、消費者の心を掴み、メディアでも頻繁に取り上げられるようになりました。
1000件以上の企画が却下された苦難の過去
現在のような異色のヒットメーカーとしての地位を確立するまで、稲本氏の道のりは決して平坦ではありませんでした。近畿大学で演劇芸能を専攻し、テレビ製作会社勤務を経て大手玩具卸会社に勤めたサラリーマン時代には、多くのアイデアが日の目を見ませんでした。
「そんなくだらないもの、誰が買うねん」「どこに売れる確約があるんですか」「稟議が通るわけないでしょ？」といった言葉を浴びせられ、苦労して生み出した企画の10個に1個も承認されない日々が続きました。サラリーマンとして働いた10年間で、1000個以上のアイデアが封印され続けたと彼は語ります。
「絶対いいと思うけどなあ……と思っていたら半年、1年後に似た商品が出て、めちゃくちゃ売れるんです。『ほら、同じこと考えてたやつがおったやんか』といつも悔しい思いをしていました」それでも腐ることなく、誰よりも多く企画を出し続けた稲本氏。その飽くなき挑戦と企画への情熱が、現在の成功の原動力となっています。
逆境を乗り越え、唯一無二の存在へ
稲本ミノル氏のキャリアは、数々の企画が却下されるという逆境から始まりました。しかし、彼はその度に諦めることなく、自身のアイデアを信じ続けました。そして、その信念と独自の視点こそが、「金色のミャクミャク貯金箱」をはじめとする数々のヒット商品を生み出し、ヘソプロダクションを年商24億円を稼ぐ企業へと成長させた原動力です。彼の物語は、創造性と不屈の精神がいかにビジネスの成功に繋がるかを示す好例であり、多くの人々に勇気を与えています。
参考文献:
