【ワシントン発】ドナルド・トランプ前米大統領は11日、米アラスカ州で15日に予定されているロシアのウラジーミル・プーチン大統領との会談において、ロシアが実効支配するウクライナ領の一部をウクライナに返還するよう求める考えを明らかにした。また、停戦には「領土の交換」が不可欠であるとの認識を改めて示し、ウクライナ側にも譲歩を求める姿勢を鮮明にしたことで、ウクライナ紛争の和平交渉に新たな動きが期待されている。この米露首脳会談は、ロシアによるウクライナ侵攻が始まった2022年2月以降初めての顔合わせとなる。
トランプ氏、プーチン氏との会談で「感触を探る」
トランプ氏はホワイトハウスでの記者団に対し、「プーチン氏に『戦争を終わらせなければならない』と伝える」と強調した。彼は、今回のプーチン氏との会談でロシア側の「感触を探る」と説明し、「最初の2分間でディール(取引)が可能かどうかわかるだろう」と語るなど、早期解決への強い意欲を示した。さらに、ウクライナが「海の大半を奪われた」と指摘し、その一部を取り戻すために交渉を進める考えを明らかにした。これは、ウクライナが被った甚大な被害を認識しつつ、現実的な解決策を模索するトランプ氏の姿勢を反映している。
ウクライナ問題解決に向けた意欲を示すドナルド・トランプ元大統領(右)。ホワイトハウスでの記者会見にて、プーチン大統領との会談における領土返還の可能性について語る。
停戦に向けた「領土交換」の主張とロシア側の要求
トランプ氏は、ウクライナ紛争の完全な停戦には、ロシアとウクライナの双方が領土面で歩み寄る必要性があると主張している。ロシア側は「完全な停戦」に応じる条件として、ウクライナ東部ドネツク州などからのウクライナ軍の撤退を求めていると報じられており、これは両国の主張が大きく隔たっている現状を示している。トランプ氏の「領土交換」という提案は、この膠着状態を打開するための新たなアプローチとなる可能性がある。
ゼレンスキー氏の反応と今後の和平交渉の展望
しかし、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は領土割譲には応じないことを明確にしており、トランプ氏はこれに対し「少し不快だ」と不満を漏らした。15日の会談にはゼレンスキー氏が招かれる可能性も取り沙汰されたが、トランプ氏は「彼はこの3年半、多くの会談を行ってきたが何も起きなかった」と述べ、参加を否定した。会談後には、ゼレンスキー氏や欧州の首脳には電話で会談内容を報告する意向を示している。トランプ氏は、次はプーチン、ゼレンスキー両氏による直接会談が行われるべきだとの考えを示し、「彼らが必要とするなら私もそこにいるだろう」と語るなど、今後の和平交渉における自身の役割にも言及した。
結論
トランプ前米大統領のプーチン氏との会談は、ウクライナ紛争の停戦に向けた新たな局面を開く可能性を秘めている。彼の「領土返還」要求と「領土交換」の提案は、国際社会が注目する中で、停戦交渉の具体的な道筋を示すものとなるか注目される。両国の直接交渉へと繋がるか、また、国際情勢にどのような影響を与えるか、今後の展開が国際社会の関心を集めている。