米厚生長官ロバート・ケネディ・ジュニア氏が、ワクチンに含まれるアルミニウム成分の安全性に関するデンマークの大規模研究論文の撤回を、掲載元の米内科学会誌「アナルズ・オブ・インターナル・メディシン」に要請したものの、同誌がこれを拒否しました。この動きは、ワクチン安全性に関する議論に新たな局面をもたらしています。
デンマーク大規模研究の概要とその結論
デンマーク政府資金提供のこの研究は、7月に「アナルズ・オブ・インターナル・メディシン」誌に掲載されました。20年以上にわたり120万人以上の子ども対象の全国データ分析の結果、ワクチンに含まれるアルミニウムが自己免疫疾患、アトピー性ないしアレルギー性疾患、神経発達障害を引き起こすという証拠は見つからないと結論。この大規模疫学調査は、ワクチンの安全性懸念に対し、重要な科学的根拠を提供します。
医学誌編集長の明確な立場表明
同誌編集長で米トーマス・ジェファーソン大学医学教授のクリスティ・レイン氏は、ロイターに「撤回する理由はない」と述べ、掲載研究の科学的妥当性と信頼性への強い自信を示しました。研究の質とデータの堅牢性が撤回要請を退ける根拠です。
米厚生長官ロバート・ケネディ・ジュニア氏の肖像。ワクチン安全性の議論に関連する。
専門家による研究の評価
英国の小児ワクチン接種専門家でブリストル大学小児科医のアダム・フィン氏は、この研究を高く評価。「ワクチンに含まれるアルミニウムの安全性に関する最も信頼できる証拠であり、信頼できる大規模で高品質なデータだ」と述べ、そのエビデンスレベルの高さと予防接種プログラムへの重要性を強調しました。
ケネディ長官の主張と背景
一方、ケネディ長官はこのデンマーク研究を「製薬業界による虚偽のプロパガンダであり、害が示されないよう綿密に設計されている」と強く非難し、同誌に「直ちに撤回」を要求。彼は以前からワクチンの安全性や有効性に疑問を投げかけ、厚生長官就任後は連邦政府の予防接種推奨手続きの全面的な転換を推進。最近の報道では、アルミニウムが自己免疫疾患やアレルギーと関連すると主張し、含有ワクチンの見直しを検討中とされています。
今回の論文撤回要請と拒否は、ワクチンの安全性に関する科学的見解と政治的立場との溝を浮き彫りにしました。大規模研究がアルミニウムと健康リスクの関連性を見出さなかった一方、長官は予防接種政策の見直しを進めており、今後の公衆衛生政策、特に予防接種プログラムの方向性に影響を与える可能性があります。