ロシア・プーチン大統領、金正恩氏に「祖国解放記念日」祝辞:米ロ首脳会談前に露朝関係強化の動き

ロシアのプーチン大統領は2025年8月12日、北朝鮮の金正恩総書記と電話会談を行い、8月15日に迎える「祖国解放記念80年」に際して祝辞を贈りました。ロシア大統領府の発表によると、この会談では、ウクライナとの戦闘に参加した北朝鮮兵士への称賛に加え、ドナルド・トランプ米大統領との首脳会談に関する情報も共有されたとされています。この動きは、米ロ首脳会談を前にした露朝関係の緊密化を示すものとして、国際社会の注目を集めています。

北朝鮮の金正恩総書記が電話会談を行う様子。2025年8月12日、ロシアのプーチン大統領との会談で露朝協力の深化が注目される。北朝鮮の金正恩総書記が電話会談を行う様子。2025年8月12日、ロシアのプーチン大統領との会談で露朝協力の深化が注目される。

異例の祝辞贈呈の背景と国際情勢への影響

プーチン大統領は例年、祖国解放記念日に合わせて北朝鮮へ祝辞を送っていましたが、今年は米ロ首脳会談が同日に予定されているため、異例にも事前に祝辞を贈ったとみられています。この前倒しでの祝辞贈呈は、米ロ首脳会談を前に北朝鮮との連携を強化する意図がある可能性が指摘されています。また、会談の中でウクライナ侵攻のための北朝鮮兵士の追加派兵など、軍事協力に関する協議が行われた可能性も示唆されており、今後のウクライナ情勢や国際安全保障環境にも影響を与えかねない動きとして注目されます。プーチン大統領は祝辞の中で「日本の植民地支配からの解放80周年」を祝い、これに対し金総書記は「侵略者との戦いで果たした(ソ連)赤軍の役割を記憶する(ロシアと)共通の祝日だ」と応じ、歴史認識を共有する姿勢を示しました。

ウクライナ紛争における北朝鮮の「支援」とロシアの評価

今回の電話会談において、プーチン大統領はロシア南西部クルスク州でウクライナ軍を撃退するにあたり、北朝鮮側が示した支援を高く評価しました。大統領は北朝鮮兵士が「勇気と英雄主義、自己犠牲」を示したと称賛し、その「貢献」を強調しました。これは、ロシアがウクライナ侵攻において、北朝鮮からの具体的な支援を受けていることを示唆するものであり、国際社会におけるロシアと北朝鮮の軍事協力の深化が改めて浮き彫りとなりました。両国の連携は、国連安全保障理事会の制裁にも関わらず進展しており、国際的な非拡散体制への懸念が高まっています。

深化する露朝「包括的戦略パートナーシップ」

北朝鮮の朝鮮中央通信も翌13日、金総書記がプーチン大統領と電話会談を行ったと報じました。金総書記はこの会談で、露朝が2024年6月に署名した「包括的戦略パートナーシップ条約」を重視する意向を改めて表明し、「今後もロシア指導部が講じる全ての措置を全面的に支持する」と述べたとしています。これは、露朝関係が単なる友好関係を超え、戦略的な協力関係へと深化していることを明確に示唆するものです。プーチン大統領は先に、ウィトコフ米特使との会談でトランプ氏との首脳会談開催に合意しており、中国やインドなど友好国の首脳にも電話で会談内容を伝えていました。今回の金総書記との電話会談も、米ロ首脳会談に向けた地固めの一環として、北朝鮮がロシアの重要なパートナーとして位置づけられていることを裏付けるものと言えるでしょう。

今回の露朝首脳間の電話会談は、両国間の軍事・政治的連携が新たな段階に入ったことを示すものです。ウクライナ紛争を巡る国際情勢が緊迫する中で、ロシアと北朝鮮が「包括的戦略パートナーシップ」を深化させることは、アジア太平洋地域の安全保障環境、ひいては世界の地政学的なバランスに大きな影響を与える可能性があります。今後も、両国の動向、特に軍事協力の具体的な内容や範囲について、国際社会からの高い関心が寄せられることとなるでしょう。