K-9自走砲事故で顔面粉砕の兵士、現役不適格審査不合格―韓国軍の課題

韓国陸軍の兵士アン・テラン氏がK-9自走砲事故で顔面を粉砕骨折する重傷を負いながらも、現役服務不適格審査に不合格となった衝撃的なニュースが報じられました。彼の事例は、韓国軍における負傷兵への対応と兵役制度の課題を浮き彫りにしています。アン氏は自身の経験をYouTubeで公開し、社会に訴えかけています。

YouTubeで事故について語る韓国軍K-9自走砲事故の負傷兵アン・テラン氏の映像YouTubeで事故について語る韓国軍K-9自走砲事故の負傷兵アン・テラン氏の映像

凄惨なK-9自走砲事故とその負傷

2023年5月23日、陸軍のある旅団が主催した砲術競技大会でK-9自走砲の操縦手として参加中のアン氏は、砲身に顔を挟まれる悲劇的な事故に遭遇しました。通常、操縦手は砲班長の指示を受けてからハッチ内に入りますが、射撃指揮車両K-77からの目標座標送信の遅延が原因で、幹部が苛立ち、誰かが突然砲身を動かしたことが事故の直接の引き金となりました。アン氏はハッチに入る間もなく左頬に砲身が直撃し、41トンの冷たい鉄の塊に顔を押し潰され、口から血が噴き出すほどの重傷を負いました。

この凄惨な事故で、彼は歯2本の折損、顔面骨の粉砕骨折、そして頭部の裂傷という致命的な負傷を負い、ヘリで緊急搬送されました。13時間45分に及ぶ大手術で顔の骨は一つひとつ再構築されましたが、彼の身体と精神に深い傷跡を残しました。

現役不適格審査の壁と軍幹部の不誠実な対応

大手術は成功したものの、部隊長から伝えられた「審査を通ればすぐ除隊できる」という説明とは裏腹に、アン氏は2024年7月の現役服務不適格審査を通過できませんでした。さらに衝撃的だったのは、事故責任を負う旅団長が「病院にいるより部隊に戻って通院した方が精神的に良い」と無神経な助言をしたとされる点です。これに対し、アン氏の母親は「健康に入隊した息子の排泄介助やおむつ交換を経験したことがあるのか。そんな状態の息子を、親の前で再び軍に送れと言えるのか」と、軍の対応と無理解に激しい憤りを表明しました。

その後、アン氏は審査合格を目指して耳鼻咽喉科、整形外科、神経科、内科、外科など複数の診療科を受診しましたが、いずれも「基準を満たさない」と診断され、そのたびに自己肯定感が崩れていったと訴えています。最終的に2024年12月の最終審査でも不合格となり、彼は現役兵として復帰することなく社会服務要員の待機者名簿に登録されることとなりました。

兵士の福祉と兵役制度の改善が急務

アン・テラン氏の事例は、韓国軍における負傷兵への支援体制、そして現役服務不適格審査制度の透明性と公平性に関して、根本的な改善が急務であることを強く示唆しています。彼の苦境は、兵役義務を負う全ての若者とその家族にとって重要な問題提起となっており、今後の軍の改革と兵士の福祉向上への継続的な注目が不可欠です。


参考文献

(c)KOREA WAVE/AFPBB News
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