2024年7月期にTBS系「火曜ドラマ」枠で鳴り物入りでスタートした日韓合作ドラマ「初恋DOGs」が、期待に反して視聴率の低迷に苦しんでいます。韓国のエンターテインメント大手CJ ENM傘下のスタジオドラゴンとTBSが初めてタッグを組んだ意欲作であるにもかかわらず、視聴者の関心を引きつけきれていないのが現状です。Netflixで世界的なヒットを飛ばした「愛の不時着」などを生み出したスタジオとの協業にもかかわらず、なぜ日本の地上波ドラマでは苦戦を強いられているのでしょうか。
「初恋DOGs」視聴率の推移と現状
「初恋DOGs」の視聴率は、放送開始から下降傾向にあります。ビデオリサーチ調べ(関東地区)による各話の個人視聴率は以下の通りです。
- 第1話(7月1日放送):世帯5.8%、個人3.3%
- 第2話(7月8日放送):世帯5.0%、個人2.6%
- 第3話(7月15日放送):世帯5.0%、個人2.8%
- 第4話(7月22日放送):世帯4.1%、個人2.2%
- 第5話(7月29日放送):世帯4.6%、個人2.4%
- 第6話(8月5日放送):世帯4.1%、個人2.3%
今日のテレビ業界では世帯視聴率よりも個人視聴率が重視される傾向にありますが、この数字は危険信号と言えるでしょう。このままでは過去1年間に放送された同局の「火10」ドラマの中で最低視聴率を記録する可能性も指摘されています。また、見逃し配信サービスのTVerにおける「お気に入り数」も60.2万と伸び悩んでおり、デジタルでの視聴層にも十分にリーチできていない実態が浮き彫りになっています。
初恋DOGs主演の清原果耶
視聴者離れの原因分析:脚本と非現実的な設定
放送ライターは、「初恋DOGs」の視聴率不振の主な原因として「脚本の面白さの欠如」を挙げています。本作は、愛を信じない弁護士と動物しか愛せない獣医が、愛犬の出会いをきっかけに織りなすラブストーリーです。人気韓国ドラマ「私の夫と結婚して」でブレイクした韓国俳優ナ・イヌが日本ドラマに初出演し、清原果耶が主演を務めることで放送前から話題を集めました。夏の海岸、可愛らしい動物、三角関係、ボーイズラブ(BL)を想起させる要素、韓国グルメなど、視聴者を引きつけようとするフックが随所に散りばめられています。
しかし、「迷子犬の報奨金が50億円」という設定はあまりに非現実的であり、物語への没入感を妨げているとの指摘があります。さらに、「犬の演技力が最大の見どころ」という意見が出るほど、恋愛ドラマとしての核が揺らいでいる点が問題視されています。ラブストーリーとしての魅力が薄れ、奇抜な設定や犬の演技に頼りすぎた結果、視聴者の共感を呼べなかったのかもしれません。
日韓ドラマの新たな協業の形を模索
TBSは2021年にCJ ENMとパートナーシップ協定を締結し、日韓合同での作品制作を進めています。「初恋DOGs」もその一環として制作されたものの、期待されたような視聴率を獲得できていません。配信プラットフォームではグローバルな人気を集める韓国ドラマですが、韓国の制作会社と組んだ日本の地上波ドラマが、これまでのように高い視聴率を必ずしも保証するわけではないという厳しい現実が突きつけられています。
この状況は、日本のテレビ局と韓国の制作会社が協力する際、単に人気要素を組み合わせるだけでなく、日本の視聴者の好みや地上波というフォーマットに合わせた脚本作り、そして物語のリアリティと魅力をいかに両立させるかという、新たな課題を浮き彫りにしています。今後の日韓合作ドラマは、視聴者の心をつかむために、より深い戦略とクリエイティブなアプローチが求められるでしょう。